ネット証券の存在は、30代~40代のビジネスパーソンには当たり前になってきた。証券会社の口座を選ぶ際には、ネット証券の営業収益(売上高)や売買代金、新規口座開設数といった指標が指針になる。
目次
1,ネット証券の「営業収益」シェアランキングTOP5、1位はSBI証券
企業会計上、日常的なビジネスで得られた収入は、小売業や製造業などの一般的な企業では「売上高」、証券会社では「営業収益」と呼ばれている。
最初に紹介する営業収益ランキングは、インターネット専業証券会社(総合証券のインターネット取引専用口座を除く)であり、決算情報をホームページ上で開示している以下の9社を対象にした。営業収益が大きい順に並べ替えてランキングTOP5を決定し、営業収益の合計額を100%とした場合の各社のシェアも併記する。
2020年12月期:楽天証券、GMOクリック証券
2020年3月期:マネックス証券、岡三オンライン証券、SBIネオトレード証券、SBIネオモバイル証券
営業収益(売上高)シェア第1位は、大方の予想通り、ネット証券最大手のSBI証券となった。47.1%という圧倒的なシェアを誇り、その金額は第2位の楽天証券の2倍超にものぼる。
第2位の楽天証券はシェアが21.2%であり、こちらも健闘している。第3位の松井証券に12.4%もの差を付けており、当面はSBI証券と楽天証券がネット証券業界の双璧であることに変わりはないだろう。
注意してほしいのは第4位のGMOクリック証券と第5位のマネックス証券だ。
GMOクリック証券は、もともと店頭FX事業を主力商品とするネット証券であるため、FXセグメントの収益が営業収益の95%以上を占めている。そのため、GMOクリック証券の営業収益だけを他社と比較すると、実態を正確につかむことができない。
上記のマネックス証券の営業収益シェアについても、前年の実績のものなので参考程度にとどめておいたほうがよい。2021年5月14日現在では親会社であるマネックスグループの有価証券報告書が提出されておらず、2021年3月期営業収益は反映されていない。
2021年3月期決算では、マネックスグループ日本セグメント(マネックスグループ、マネックス証券、マネックス・アセットマネジメントなど)は増収増益となり、株式市場の活況を背景に、マネックス証券も新規口座開設数が大幅に増加した。
このような状況から、マネックス証券の2021年3月期営業収益が反映されると、第3位~第5位の営業収益ランキングに変動が生じる可能性もあります。
## 2,ネット証券の「新規口座開設数」シェアランキングTOP5、1位は楽天証券
直近1年間の新規口座開設数ランキングを見ると、この1年間でより多くの新規顧客を獲得したネット証券を知ることができる。
ネット証券の顧客は大半が個人投資家なので、口座数は単純にネット証券の顧客数に置き換えることができます。つまり、新規口座開設数シェアランキングは、ネット証券の人気度を測る指標として利用できるのです。
新規口座開設数シェアランキングは以下のネット証券7社を対象にした。各社とも、ホームページ上で、決算情報あるいは月次開示情報として、口座数または新規口座開設数の実績値を開示しており、対象7社のデータにもとづいて、ランキングを決定した。
楽天証券
松井証券
マネックス証券
auカブコム証券
岡三オンライン証券
GMOクリック証券
直近1年間の新規口座開設数シェアランキングの第1位は51.0%の楽天証券であり、第2位はシェア34.8%のSBI証券である。
これは、直近1年間において、ネット証券業界で新たに口座を開設した投資家のうち、約5割が楽天証券を選び、3割強がSBI証券を選んだことを意味する。
これだけを見ても、楽天証券の圧倒的な人気の高さが伺えます。さらに、上位2社のシェアは全体の85.8%であり、新規顧客からの人気が上位2社に集中した印象を受けます。
営業収益ランキング上位2社のシェアが68.3%、後述する国内株式委託売買代金ランキング上位2社のシェアが68.8%であるのに比べると、楽天証券とSBI証券の新規口座開設数シェアの高さは明らかだ。
それに対して、ランキング第3位以下のネット証券のシェアはすべてあわせても14.2%に過ぎない。
新規口座開設数シェアの高さから、楽天証券とSBI証券はネット証券界のスーパー2大人気ネット証券だと言うことができるだろう。
楽天スーパーポイントを使用する投資信託や株式の買付けまたは積立て、バイナリーオプション投資、さらには楽天カードによる投信積立決済の仕組みが、多くの楽天会員を楽天証券の新規顧客として誘導することにつながった。
楽天証券の2020年12月期新規口座開設者の46%を楽天会員が占めていた事実からも、投資エコシステムの有効性を確認できる。
第2位のSBI証券の数値は、SBI証券本体のみの値である。
SBIホールディングス傘下のSBIネオトレード証券とSBIネオモバイル証券の正確な新規口座開設数は開示されていないため、両社はランキング対象には含まれていない。
中でも、SBIネオモバイル証券は少額から株式投資できるスマホ証券として顧客基盤を拡大しており、SBI証券、SBIネオトレード証券、SBIネオモバイル証券を含むSBIホールディングスとしての新規口座開設数シェアはもう少し上昇すると考えられます。
3,ネット証券の「国内株式 委託売買代金」シェアランキングTOP5、SBIと楽天でシェア約66%
ネット証券各社のホームページ上で開示されている月次開示情報もしくは決算報告資料などを見れば、1日平均あるいは毎月の委託売買代金合計額を知ることができる。
例えば、直近1年間を対象にして、ネット証券各社の月次国内株式 委託売買代金を合計し、比較すれば、国内株式が活発に取引されているネット証券を簡単に割り出すことができる。
国内株式 委託売買代金ランキングでは、対象となるネット証券の、2020年4月1日~2021年3月31日までの委託売買代金合計額を算出し、その合計額を大きい順に並べ替えて、ランキングTOP5を導き出した。
ランキングの対象は、月次開示情報や決算報告資料で国内株式の委託売買代金を確認できた以下の7社である。
楽天証券
松井証券
マネックス証券
auカブコム証券
GMOクリック証券
岡三オンライン証券
2020年4月1日~2021年3月31日までの1年間(楽天証券は2020年1月1日~2020年12月31日まで)の国内株式委託売買代金合計額のシェアランキングは、SBI証券が42.6%、楽天証券が26.2%で、それぞれ第1位と第2位にランクインした。
SBI証券や楽天証券のように、国内株式取引を主な商品として取り扱っているネット証券にとって、国内株式の委託売買代金シェアは株式市場におけるシェアと同等の意味をもつ。
SBI証券と楽天証券は、ビジネスの規模だけでなく、株式市場のシェアにおいても2トップであるのは明らかだ。
上位2社だけでなく、松井証券にも注目したい。営業収益3位、新規口座開設数4位に続き、国内株式の委託売買代金シェアランキングで第3位にランクインしている。
松井証券の営業収益シェアは全体の8.8%にすぎないですが、国内株式委託売買代金シェアは10.9%を占めています。松井証券は投資初心者に適した安い手数料設定と、信用取引に定評があります。こうした明確なサービス方針が、松井証券の顧客による活発な取引と安定的な市場シェアの裏付けとなっています。
4,ネット証券業界の不動の2トップはSBI証券と楽天証券、それに続く松井証券
今回は、インターネット専業証券会社を対象に、営業収益(売上高)、新規口座開設数、そして国内株式委託売買代金の3つの切り口で、ランキングとシェアを紹介した。
従来から、SBI証券と楽天証券は2大ネット証券として認知されてきたが、こうした事実を直近の実績をベースにしたシェアランキングで改めて確認することができた。
もう一つの収穫は、松井証券がネット証券業界において、実績と人気、どちらも第3位の実力企業であることが可視化されたことだ。
これから株式取引を始める場合、あるいは新たにネット証券に口座を開設する場合には、シェアランキングはネット証券選びの目安になるのでとても便利です。しかし、自分が利用する証券口座は、シェアランキングから一歩踏み込んで、提供されているサービスや手数料体系なども考慮した上で、自分が使いやすいネット証券を選んでください。
ネット証券のシェアについてよくある3つのQ&A
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