老後の備えとして注目のiDeCo(イデコ)。長期投資が基本だが、運用する中で商品を変更し、調整する場面も出てくる。そのために配分変更やスイッチングといった方法が用意されているが、どちらを、どのようなタイミングで、どういった決め方で行うのがよいのか?iDeCo(イデコ)の基本的な運用テクニックも合わせて、紹介していこう。

目次

目次

  1. 1,iDeCo(イデコ)の運用商品の変更方法は2種類:配分変更とスイッチング
  2. 2,iDeCo(イデコ)の運用商品変更を検討したい3つのタイミング
  3. 3,定期的に年齢に合った資産配分調整やリバランスをするときの決め方
  4. 4,iDeCo(イデコ)の運用商品変更の3つの注意点
  5. 5,運用商品の変更の手間が抑えられるバランス型ファンドも視野に

1,iDeCo(イデコ)の運用商品の変更方法は2種類:配分変更とスイッチング

iDeCoは掛金額と商品を自分で設定し、長期・分散・少額と初心者に推奨される投資方法を実践できる老後の資産形成方法。加えて、

  • 掛金が全額控除
  • 運用益が非課税
  • 年金として受け取る場合は公的年金控除対象で税額が抑えられる

といった税制優遇があり人気だ。実際に運用をしていると、商品を変更するという機会ももちろん出てくる。どのようなときに商品を変更すべきかということの前に、まずはiDeCoの運用商品変更方法を知っておきたい。商品変更には配分変更とスイッチングの2種類がある。

配分変更:毎月購入する運用商品や割合を変更する

iDeCoは毎月の掛金で何の運用商品をどのくらいの割合で購入するかを自分で選択する。配分変更は、その選択した運用商品と掛金の配分割合を変更する方法だ。つまり、これから積み立てる運用商品をどうするかということであり、それまで積み立てた運用商品には影響しない。掛金1万円として配分変更をした場合、購入する運用商品がどのように変わるのか一例を見てみよう。

運用商品 配分変更前 配分変更後
配分割合 掛金 配分割合 掛金
商品A 50% 5,000円 30% 3,000円
商品B 20% 2,000円 0% 0円
商品C 30% 3,000円 30% 3,000円
商品D 0% 0円 40% 4,000円
合計 100% 1万円 100% 1万円
(※筆者作成)

 

上記表のように配分変更することで掛金の割合を変更でき、新たに別の商品への積立も可能だ。配分変更は手数料無料でいつでも手続きできるが、引落日から換算した期限が決まっている。期限までに手続きすれば、その月の掛金から配分変更がなされ、期限後の手続きは翌月の掛金から適用される。期限は金融機関により異なるため、確認しておこう。

なお、上記表では配分変更後に商品Bの割合が0%になっているが、それまで積み立てた商品Bは継続して保有している。過去に積み立てた商品を別の商品に入れ替えるには、スイッチングの手続きが必要だ。

スイッチング:保有中の運用商品を入れ替える

iDeCoの配分変更はこれから積み立てる運用商品に対する手続きだったが、スイッチングは今までに積み立てた運用商品を入れ替える手続きだ。スイッチングはある商品の一部または全部を売却して別の商品を購入することであり、毎月の掛金で購入する商品は変わらない。スイッチングでどのように商品が入れ替わるのか見てみよう。

運用商品 スイッチング前 スイッチング後
商品A 50万円 10万円
商品B 20万円 0万円
商品C 30万円 50万円
商品D 0万円 40万円
合計残高 100万円 100万円
(※筆者作成)

 

上記表の例では、40万円分の商品Aを商品Dにスイッチングし、商品Bは全額を商品Cにスイッチングした。スイッチングは売却した資金で行うため、全体の残高は変わらない。スイッチングの手続きに手数料がかかることもないため、商品を入れ替えたいと思ったらいつでも手続きは可能だ。ただし、手続きの締切り時間が決まっており、その前か後かで当日受付になるか翌営業日受付になるかが異なる。

2,iDeCo(イデコ)の運用商品変更を検討したい3つのタイミング

配分変更やスイッチングは自由にできるが、頻繁に行っても運用成果の向上はあまり期待できない。では、どのようなときに配分変更やスイッチングを行えばいいのだろうか。

タイミング1,年齢に合わせて資産配分を変更するとき

資産運用の基本として「分散投資」があり、iDeCoでもそれを実践することでリスクを抑えながら運用できる。つまり、値動きの性質が異なる資産を組み合わせて運用できるということ。

一般的な組み合わせ方法として、若いときほどリスクを取った資産配分にし、年配になるほどリスクを抑えた資産配分が基本。これは年齢が上がるほど、損失が出たときのリカバリーをしづらくなるためだ。リスクを取りにくくなってきたら、掛金の配分割合を変更する必要も生じてくる。

運用商品の資産配分を変更するには、配分変更の手続きをしよう。スイッチングでも資産配分は変更できるが、スイッチングは保有資産に対する変更である。毎月の掛金に対する配分割合を変更しなければ、それまでと同じリスク度合いで商品を買い続けてしまうため、配分変更で購入する商品の比率を見直す必要がある。

タイミング2,リバランスで運用商品の比率を調整するとき

iDeCoで掛金の配分を決めて運用していたとしても、価格変動などで保有する運用商品の比率は徐々に崩れていく。そのまま運用を継続もできるが、仮に株式の比率が高くなりすぎた場合、運用資産のリスクが想定よりも大きくなってしまうこともある。そのようなときはスイッチングで比率が高くなった資産を売却し、低くなった資産を購入するなど運用商品の比率をリバランスするといいだろう。

リバランスは崩れた運用商品の比率を元に戻す作業だ。メリットはリターンの安定や向上を期待できること。例えば、商品Aと商品Bを50万円ずつ保有しているとする。商品Aはそのままで商品Bが2倍に値上がりしたため、75万円ずつの同額になるようリバランスする。その後、商品Bが元の値段に戻ったとしても、リバランスしていたおかげで利益は手元に残る。

運用商品が値上がりを続ける場合や値下がりを続ける場合、リバランスが必ずしも効果的でないこともあるが、一般的には運用成果を高めてくれると認識しておいていいだろう。

タイミング3,受取時期を見据えて利益を確保したいとき

iDeCoの受取時期が近づくにつれ、運用資産が大きく減ることは避けたい。特にこういったことが起こりやすいとされるのは株式商品だ。株式市場の大きな暴落で受取時期を迎える前に含み益がなくなったり、損失を被ったりする可能性もある。万が一のことを考えて、利益を確保しておくことも選択肢として考えたい。

運用資産の利益を確保するには、スイッチングを活用しよう。方法は単純で利益の出ている運用商品、あるいはその利益相当分を元本確保型や国内債券の商品にスイッチングするだけだ。元本確保型は預金商品や保険商品で価格変動がないため、運用資産の避難先として利用できる。国内債券は価格変動があるものの、株式と比較して変動幅は小さく元本確保型よりは利回りも期待できる。

株式市場の暴落はいつ起こるか予想できないため、運用資産の一部を安定したものにスイッチングしておくのも一つの方法だ。とはいえ、20代~40代はiDeCoを換金できるようになるまでの運用期間が長いため、早い時期から利益の確保をしていると逆に運用成果が下がる可能性もある。若い世代の場合、こうした方法は将来の戦略として参考にする程度でいいだろう。

3,定期的に年齢に合った資産配分調整やリバランスをするときの決め方

iDeCoの商品を変更する場面として、「年齢」「リバランス」「利益確保」を挙げた。このうち「年齢」と「リバランス」については定期的に行いたい。ではどのタイミング、どのような基準で決めていくのがよいのだろうか?

年齢に合った資産配分調整はリスク資産の比率で決める

年を経たからといっても、もちろん毎年見直す必要はない。資産配分で取れるリスクは年齢とともに変化していくため、例えば30代から40代になるタイミングなど年代が変わる時期に見直すのが簡単だろう。節目のタイミングはわかりやすく、メンテナンス時期に適している。

また、よく参考にされるのが「100−年齢=リスク資産の比率」だ。もし現在30歳であれば70%、40歳であれば60%を株式などのリスク資産に振り向ける。こうしたシンプルな基準を元にすれば資産配分を見直す際にもあれこれ迷うことも少なく、比較的簡単に運用商品を変更できるはずだ。

リバランス自分が覚えやすい節目に行う

リバランスも一定の法則に基づいて行うのがよいとされている。例えば、設定した資産配分の比率から10%以上変化したときなど割合の変動幅に応じて行う方法もある。しかしこれは市場動向をチェックしなければいけないため、やや手間がかかる。半年や1年ごとなど定期的にリバランスをするほうが初心者や忙しい人には向いているだろう。

実際にリバランスのタイミングをいつに設定するかは、自分が覚えやすいかどうかを基準にするといいだろう。例えば誕生月や年末、お正月、iDeCoの運用報告書が送られてくるタイミングなど、毎年必ず訪れるイベントを目安にすると忘れることはないだろう。

リバランスは運用パフォーマンスを上げるために行うものだが、それ以外にも自身の運用状況を振り返るきっかけにもなる。運用成果があまりよくない時期ももちろんあるだろうが、長期投資であることを忘れずに気長に付き合っていこう。

4,iDeCo(イデコ)の運用商品変更の3つの注意点

iDeCoは紹介してきたような場面、決め方で運用商品を変更し、つどつど調整していくことが望ましいが、その際に以下の3つの点は注意しておきたい。

注意点1,配分変更はむやみに行わない

iDeCoの運用商品は資産配分を見直すことも必要になると紹介したが、むやみに配分変更を行うべきではない。iDeCoの基本的な考え方である「長期運用」に反するためだ。

長期の資産運用では、投資のタイミングや銘柄選定よりも、お金をどこに、どのくらい掛けるかという、資産配分が運用成果を左右する主な要因とされている。一般的には運用成果の8割以上が資産配分によって決まるといわれている。もちろん運用商品のコストや中身を比較することは大事だが、商品ありきではない資産配分の重要性が示されている。

短期の利益を狙うスイングトレードなどならともかく、iDeCoは長期投資が前提の制度であるため、資産配分の変更は必要最小限に抑えるようにしたい。

注意点2,運用商品のスイッチングで信託財産留保額がかかることもある

iDeCoのスイッチングは手続き自体に手数料はかからないが、売却の際に手数料が発生する商品もある。この売却時の手数料を「信託財産留保額」という。

投資信託は不特定多数の人たちから資金を集め、巨大な一つの運用資産として投資を行っている。個人が投資信託を売却して換金するのは自由だが、運用会社はそのためのコスト負担や現金の用意が必要となってくる。その費用は運用資産から捻出されるため、投資信託を保有し続ける人たちからすれば不公平になる。そこで解約する人からペナルティとして信託財産留保額を徴収する投資信託があるというわけだ。

信託財産留保額は運用会社の収益になるわけではなく、投資信託の運用資産に残すお金であるため、継続して保有する人たちからすれば安定的な運用につながる側面もある。平均的な信託財産留保額は0.3%程度だが、設定されていない投資信託も多くある。信託財産留保額がかかるかどうかは、運用商品を購入する前に確認しておこう。

注意点3,スイッチングは手続き完了まで時間がかかる

iDeCoはスイッチングで運用商品を自由に変更できるが、手続きはすぐに完了するわけではなくある程度の時間がかかる。

スイッチングの流れとしては、手続きを申し込んだ後に、その指示を商品販売会社に出し、売却注文が行われる。売却注文が約定すると受渡となるが、そこまででも4営業日ほどかかる。さらに買付注文を出して受渡日までは2~4営業日ほどかかる。定期預金は当日に約定と受渡も可能だが、投資信託の場合はスイッチング完了までに1週間前後かかると考えておこう。

このようにスイッチングの手続きは時間がかかるため、短期的な売買には向いてない。iDeCoは長期で運用していく制度であることからも、必要なスイッチングのみ行うようにしたい。

5,運用商品の変更の手間が抑えられるバランス型ファンドも視野に

iDeCoの運用商品はメンテナンスのために変更が必要なこともあるが、中には1年に1回の見直しも面倒だ、という人もいるかもしれない。そのような人は、バランス型ファンドで運用することを検討してみるのもよいだろう。

バランス型ファンドは最初からいくつかの資産が組み合わされており、自分で資産配分を考える必要のない投資信託だ。運用途中のリバランスも運用会社が行ってくれるため、リスク度合いに合った商品さえ選べば積み立てるだけで済む手軽さがある。特定の資産に投資する単一型投資信託と比べて運用コストはかかるが、できるだけ手間をかけたくない人は活用することも検討してみよう。

 

國村功志
執筆・國村功志
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも開催。CFP®、証券外務員一種保有。
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。CFP®、証券外務員一種保有。

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