正しく部下を評価するためのたった1つの方法

2019.3.28
BUSINESS
(写真=fizkes/Shutterstock.com)
(写真=fizkes/Shutterstock.com)
(本記事は、望月禎彦氏、髙橋恭介氏の著書『簡単なのに驚きの効果「部下ノート」がすべてを解決する』アスコム、2018年10月29日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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できる部下にはコーチング、できない部下にはティーチング

できない人間にも2種類ある

皆さんは、部下がどうしてできないのか考えたことがありますか?

実は、「できない」にも2段階の「できない」があります。

(1)そもそもやり方がわからない、だからできない
(2)やり方はわかっているけど、いつもできるわけではない

そして、(1)をクリアして、(2)をクリアして、いつでもできるようなった人が、いわゆる「できる部下」。当然ながら、(1)の人、(2)の人、そして「できる部下」に対する指導法は変わってきます。

「できる部下」をさらに伸ばすのが、自主性に任せて育てる「コーチング」という手法です。

コーチングとは、目標を達成するために必要な視点や考え方、スキルなどへの気づきを促し、自発的な行動を支援することです。

自分で考えて行動できる人たちですから、コーチングで視点や新しい気づきを整え、ヒントを与えるだけで、どんどん成長してくれます。

しかし、(1)と(2)にいる「できない部下」にはコーチングという手法はどうでしょうか。できない部下に適しているのは、細かく教え込む「ティーチング」です。ティーチングは、自主性をなくしてしまうといわれますが、そもそも「できない」のですから、どれだけ素晴らしいコーチングをしたところで先には進めません。

部下がどうしてできないのかも考えず、ただ「できない部下」と烙印を押すのは、上司の仕事を放棄しているようなもの。できない部下と言う前にティーチングで細かく教えてからでも遅くはありません。

ティーチングで「できる部下」になったら、コーチングでさらに伸ばす。この2つの手法を部下によって使い分けることがとても大事なことなのです。

できない部下には、行動を細分化して教える

それでは、(1)と(2)の段階にある部下を、どうしたら「できる部下」に育てることができるか。

ティーチングの仕方を教えます。

そのヒントは、行動分析学にあります。

行動分析学とは、もともと小学校の先生が学ぶ学問のことで、「モンスター・ペアレント」という言葉を生み出した教育者として知られるTOSS(旧・教育技術法則化運動)代表である向山洋一さんが提唱する学問です。

行動分析学とは、できない子どもをどうやって早くできるようにするか。「子ども」を「部下」に言い換えると、そのまま使えることがなんとなくわかりますよね。

行動分析学によると、(1)をクリアして(2)の段階になるには、行動を細分化することだそうです。

たとえば、逆上がりは、次の5つのステップで動作が完成します。
  1. 鉄棒を両手で握って立つ
  2. 片足を振り上げる
  3. もう片方の足を蹴る
  4. 肘を曲げて体を引き上げる
  5. 鉄棒に巻きつく
できない子どもには、このステップそのものを知らない子がいます。断片的にしかわかっていない子もいます。途中までできるけど、後半ができない子もいます。たった1つのステップができなくて逆上がりができない子もいます。

要するに、「逆上がりができない」といっても、その理由は人それぞれなのです。

そして、行動を細分化することで、練習そのものを細分化できるし、苦手なところだけを練習することもできます。

できない子どもに、「もっと練習すればできるようになる」と言ったところで、やり方がわからなければ、一生できないのです。

できない部下が、(1)の段階をクリアできないのも同じ理由です。

商品を売るとか、製品を完成させるとか、最終地点はもちろんわかっていますが、そこに至るまでがわからないから、いつまでたってもできないのです。

それにミスしたり、失敗しても、どこが本当の原因なのかわからないから、また同じミスや失敗をするのです。

行動を細分化するのは手間がかかると思います。しかし、もし、皆さんの部下が(1)の段階だとしたら、必要になります。

電車に乗ったことがない人に、「○○駅まで電車で来てくれないか」と言ってもたどり着けないのと同じです。

できるようになると簡単なことでも、そこに至るまでには、どうしてもひと手間かかるものです。ここで手抜きしないことが、あとから自分をラクにしてくれます。

(1)から(2)に到達するには行動を細分化し、丁寧に教えることです。

(2)から「いつでもできる」部下にするには、習慣として身につけさせることです。やり方はわかっているのですから、ときどきしかやらないのは、やる気がないだけ。

ここで上司にできることは、できたときにほめること、そしてできたことを認めてあげることです。人間はほめられたり、承認されたりするとうれしくなって、もう一度という気持ちになります。

(2)まで到達すれば、「できる部下」にするまでもう少し。ここで部下ノートを使って磨かれる観察力や洞察力が役に立ちます。最適なタイミングを見計らって、部下に声をかけたり、ほめたりしましょう。

正しく部下を評価するためのたった1つの方法

評価の直近化傾向を「部下ノート」がカバーする

部下ノートが、部下の毎日の行動を評価しているようなものと話しましたが、部下の行動を毎日こまめに観察することは、部下を正しく評価するうえでも大きな意味があります。

それは、評価のときに危惧される2つの要素を回避してくれるからです。

1つは、ハロー効果。

ハロー効果とは、1つの悪い事象に引きずられて、すべてが悪いイメージになってしまうことです。たとえば、評価を下す時期のほんの少し前に、部下が大きなミスをしたとします。すると、そのイメージに引っ張られて、それまでの貢献が忘れられることがあります。

これは評価においてフェアとはいえません。部下ノートをつけていれば、それ以前のことも記録があるので、悪いイメージに引きずられることはなくなります。

もう1つは、直近化傾向。

たとえば評価の基準期間が4月~6月だったとしても、人間の記憶は、4月前半より6月後半のほうが鮮明なため、どうしても基準期間の後半のイメージで評価を下しがちなところがあります。

評価期間が半年に1回だとしたら、それこそ半年前の記憶など怪しげなものです。半年前と直近1ヵ月を同等レベルで見るのは難しいでしょう。

この直近化傾向に関しても、部下ノートを継続していれば、半年前も直近も平等に評価することが可能になります。

目に見えない貢献度を評価する、コンピテンシーを運用する場合、部下ノートは大きな役割を果たすことにもなるのです。

「部下ノート」で部下が自分で目標をつくれるようになる

部下ノートは、部下の目標を設定するときにも活用できます。

部下を評価するには、目標設定が必要です。目標という可視化した到達点があるからこそ、どの程度近づけたのか、到達できたのかという評価を下すことができます。

コンピテンシーを評価に活用するのは、数字としてあらわれない貢献度を可視化するためで、コンピテンシーがあることで、はじめて行動目標を具体的に設定することができるようになります。

目標設定は上司と部下で話し合いながら決めることです。

いまだに会社側から上司を通して目標を決められる会社もありますが、与えられた目標では部下にやらされ感が充満し、達成意欲がそがれてしまいます。それに、与えられた目標だと、部下が目標を達成するイメージをつくるのが難しくなります。

部下ノートが目標設定においておおいに活用できるのは、上司側に部下の行動の情報があるため、部下に適した目標を提案できるからです。仮に、部下からたやすく達成できるような目標の申し出があったとしても、具体的な行動記録を裏付けに、部下の成長につながる目標に上方修正することができます。

目標を設定するうえで、最も大切なことは、最終的な目標は部下が自分で決めるということです。上司が、「もう少し高くしたほうがいい」とか、「それは高すぎるから今回はこれくらいで」とか、アドバイスしたとしても、最後に首をタテに振るのは部下です。目標に向けて動き出すうえで、この自己決定感はすごく大事。そこに、やらされ感は、まったくありません。

部下が求めているのは正当な評価

部下が目標にむけて頑張る理由は、自分で決めたことを達成したいという思いは当然ですが、達成することによって評価が上がり、それが自分の報酬アップにつながるからです。

しかも、その報酬は納得できるものだからです。

「今期は頑張ったから〇〇円アップ」

部下としてはうれしい話ですが、単に「頑張ったから」と言われても納得できるものではありません。特に数字で貢献度があらわれない部門なら、なおさらです。どうしてこれだけアップしたのか、それなら来期は何をすれば、さらにアップするのか。

部下が求めているのは、たくさん報酬をもらえることではなく、正当な評価なのです。正当なら、多くても少なくても納得するし、次の目標を明確に自分の中でイメージできるようになります。

部下ノートを使えば、上司が部下のことを細かく見ることができるようになって、部下が正しい目標を設定できるようになり、その目標に向けた活動を上司が細かくサポートすることで、部下を正しく評価できます。

そして、その評価を報酬に反映できれば、部下のやる気は高まるはずです。

「部下を育てる」能力がないと会社では生き残れない

企業にどうして管理職が必要なのか?

なぜ、管理職が企業には必要で、なぜ直接部門で貢献してきた人材を管理職にするのか。それは、その人材がつくってきた数字と同等の数字をつくれる部下を育てれば育てるほど、会社の業績は上がるからです。

たとえば、1億円の利益を出してきたAさんを管理職に登用し、10人の部下を持たせたとします。Aさんが管理職専任になったら、1億円の利益はなくなります。

そうすると利益が落ちるイメージになりますが、実際は落ちません。なぜ売上が落ちないかというと、10人の部下がAさんの10%の成果を出せば、1億円の利益をキープできるからです。全員が20%の成果を出せば、利益は2億円になります。

これが企業に管理職が必要な理由です。そして管理職の最大の責務は、1人でも多くの「できる部下」をつくること。成果を出せる「できる部下」を、やがて自分のポジションを任せられる人材に育てることです。

それが、会社を永続的に発展させることにつながるし、自分がさらに上のポジションにいくための条件になります。

部下を持つ立場の人は、それだけで公人です。

その自覚がある人がどれほどいるかわかりませんが、上司には、部下が1人だったとしても、その人の人生を左右する責任があるからです。

部下の幸せ、成長を願う。それが上司自身の人生の糧になり、幸せにつながることがわかるようになるのが理想です。

そのためにも、部下ノートを使って、できない部下を「できる部下」に育てることです。書き続けることで部下は育ち、自分のビジネスパーソンとしてのスキルも確実にアップします。
 
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望月禎彦(もちづき・よしひこ)
人事政策研究所代表。1960年生まれ。ユニ・チャーム株式会社にて営業を経て人事部で採用、研修の実務を経験。92年に独立。主に中堅企業の人事政策を支援。「できる社員」を着実に増やし、成果をつなげる手法は、多くの企業で指示され、支援先は、300社を超える。2010年には人事評価ASPシステム「コンピリーダー」を開発し、台湾、香港なども含め1000企業が導入している。

髙橋恭介(たかはし・きょうすけ)
株式会社あしたのチーム代表取締役会長。一般社団法人人事評価推進協議会代表理事。1974年、千葉県松戸市生まれ。興銀リース株式会社を経て、2002年にプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。同社での経験を生かし、2008年、株式会社あしたのチームを設立、代表取締役社長に就任。
 

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