(本記事は、望月禎彦氏、髙橋恭介氏の著書『簡単なのに驚きの効果「部下ノート」がすべてを解決する』アスコム、2018年10月29日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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あなたの指導が若い人に伝わらない一番の理由

「〇〇世代」という言葉をよく使う上司は失敗する

私が30年間、300社以上の支援をして見てきたなかで、フィードバックがうまくいかない上司には、次の2つの特徴があります。

  • 「自分がいいと思うことは部下もいいと思っている」「自分の世代は、これで成長した」という自分基準人間。
  • 「〇〇世代」「今どきの若い人」というすぐに大まかなくくりで人のことを評価するレッテル貼り人間。

    どちらも単なる自分の、もしくは自分が思い込んだ根拠のない価値観の押しつけをする人間です。部下ノートを1週間もつければ、自分が受けてきた指導方法が必ずしも万能でないことも、年代が同じだからといって、すべての部下が同じ性格ではないことも、気づくはずです。

    特に、部下を育てられない上司に共通している項目として、一番に取り上げられるのが、「レッテル貼り」。個々に対応するのが面倒で、上司がすぐにやりがちな行動ですが、部下にはまったく受け入れられていないことを自覚してください。

    「ゆとり世代は」「最近の若い人は」「20代社員は」「女性社員は」「今年の新人は」「中国人は」……と、レッテルにはいろいろなものがありますが、ひとまとめに評価して、ひとまとめに育成しようとするのは、まったくの愚策。

    できない部下をなんとかしようという話をしてきましたが、つい「ゆとり世代とは……」と話してしまう上司ほど、実はできない部下をつくる「ダメ上司」なのです。

    だからこそ、部下ノートで部下1人ひとりを見る習慣をつくることが大切なのです。

    ちなみに、1987年に出版された部下を指導するための本に、新人類の特色が次のように書かれています。

  • 躾がなっておらず、過保護に育っている。
  • 豊かな時代に生きているので、飢えを知らない。
  • 「ながら」族である。
  • 飽きっぽい。
  • 仕事に対して受け身の人が多く、常に指示を待っている。
  • 仲間外れに恐怖心があるのか、新人類語をよく使う。
  • 感性的な会話を好み、長電話である。
  • エレクトロニクスに強い。

    これらは、そのまま「ゆとり世代」の特徴にも当てはまります。〇〇世代とひとくくりにするのは、ほとんど意味がないことなのです。

ダメな上司は、思いつきで話をする

思いつきで注意をしても何も意味がない

フィードバックは、結果や評価に対して、部下が自ら考え、解決策をつくるのが理想で、そうすれば、上司に言われなくても自分から行動できるようになります。

といっても、それは「できる部下」の話で、できない部下には、どうしても上司からの提案やアドバイス、指導が必要です。

それが「栄養を与える」ということです。

問題は栄養の与え方です。

フィードバックの現場であれば、部下への伝え方ということになります。

うまく伝えられなければ、部下は上司が思うように動いてくれないし、成長もしてくれません。自分の仕事がラクになることはないということです。逆に、部下にうまく伝えられれば、自分もどんどんラクになるということです。

それでは、伝えるときに何が一番重要なのか?

それは、何を伝えるのかしっかり整理してから、話を始めることです。

部下ノートを使って現場で部下にアドバイスを送るときも、必要な手順です。「あいつ、あんなことしている」と気づいて、その手順を飛ばしてその場で思いついたままに話しにいくと、どうしても感情が先に立ちます。

目的は部下の行動を変えることで、その場で部下を怒って委縮させたり、反省させたりすることではありません。部下が反省するのは後からでも十分です。

まとまった時間のある面談のときも、その手順を飛ばすと、フィードバックの途中から話が違う方向へいくことがあります。話が飛んで時間がなくなって、肝心なことが伝えられなかったという経験がある人もいるのではないでしょうか。

それで部下が変わらなければ、伝えきれなかった上司の責任。

伝えるべきことは、部下と話す前にまとめる。

結果や評価、数字は把握していても、そこが抜け落ちているとフィードバックになりません。その状態で部下と話しても、ただの指摘や報告。部下も「わかりました」「そうですね」で終わってしまいます。

上司は、前項に書いた部下から聞き出したい3つの要素を意識し、何を話すか準備してから、部下に声をかけることです。

頭の中にあるから大丈夫という人もいますが、紙にまとめておくのがベスト。長々と文章にする必要はなく、箇条書きで十分。部下と話しながら、目を向けると内容を把握できるようなものがあれば、伝え漏れを防ぐことができます。

現場で声をかけるときも、できれば用意したほうがいいでしょう。作業のミスを指摘するときなどは、マニュアルや手順書を持って話してあげるほうが、部下もどこが間違っているのか、どうすればいいのか、よくわかります。

「何を言っているかわからない」と部下に思われないための3つの約束

伝え方が悪いと信頼はいつまでも勝ち取れない

わずかな時間でも伝えたいことが伝わる人と、長々と話しても伝わらない人がいます。「結局、あの人は何を言いたかったの?」と話が終わってから首をかしげた経験が誰にでもあるでしょう。

上司と部下との間でもよくあることです。上司は伝えたと思っても、部下は「?」。これでは部下の行動は変わらないどころか、それが何度も続けば、部下からの信頼を失います。

「何度言ってもわかってくれない」とできない部下を嘆く原因は、実は上司のほうにあるかもしれません。

人にものを伝えるときには、以下の3つを意識するだけで、よく伝わるようになります。

(1)結論を先に言う
(2)伝えたいことはシンプルに
(3)イメージできるように伝える

では、それぞれ細かく見ていきましょう。

(1)結論を先に言う
部下が行動に移せるように伝えるには、結論を先に言ってあげることです。
皆さんも、長いメールや長話の最後に、「参加できません」「お断りします」「当日は1時間遅れます」など結論が出てきて、「それを先に言ってよ」とイラッとしたことがあると思います。忙しいときはなおさらです。

フィードバックで伝えられる側になる部下も同じです。

やるのかやらないのか、行ったほうがいいのか行かなくていいのか、進めたほうがいいのか中断したほうがいいのか、など結論から話してあげないと部下の頭が混乱して、結局何をするべきかわからなくなることがあります。

理由を長々と話す前に、まずは結論。

フィードバックのときに伝えたいことが3つあるときは、冒頭で「○○くんへの提案が3つある。1つは……」と、3つあることを伝えてから話を始めることです。それだけで部下の頭は、話を聞く準備ができます。

(2)伝えたいことはシンプルに
部下に結論を先に伝えるときに気をつけるのは、内容をできるだけシンプルにすることです。

やるやらない、参加する参加しないといった二者択一の場合は、どちらなのか明確に指示するようにしましょう。

また、複数の人が絡んでくる仕事のときは、ほかの人がどうこうではなく、その部下がやるべきこと、したほうがいいことだけを最初にしっかり伝えることです。

複数の手順で行う仕事のときは、最重視すべき作業だけを伝えることです。

できない部下には、言いたいことが盛りだくさんなのはわかりますが、それを器用にできるなら、すでに「できる部下」。1つひとつクリアさせていくのが上司の手腕になります。

(3)イメージできるように伝える
できない部下は、何をどうしたらいいのかがわからなくて前に進めないことがよくあります。

ですから、上司はわかっているという前提で話さないことです。

たとえば、10分早く出社することを部下に提案したとします。上司は、10分早く会社に来れば、あれをやって、これをやってと頭に思い浮かべることができますが、できない部下にはそれができない。

10分早い出社を提案するなら、その10分で何をするのかまで具体的にアドバイスすることです。

「明日から10分早く出社しようか」ではなく、「明日から10分早く出社して、その日の商談の資料を整理するようにしようか」まで伝える。

そうすることで、部下は何をすればいいかをイメージすることができるようになります。
 

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望月禎彦(もちづき・よしひこ)
人事政策研究所代表。1960年生まれ。ユニ・チャーム株式会社にて営業を経て人事部で採用、研修の実務を経験。92年に独立。主に中堅企業の人事政策を支援。「できる社員」を着実に増やし、成果をつなげる手法は、多くの企業で指示され、支援先は、300社を超える。2010年には人事評価ASPシステム「コンピリーダー」を開発し、台湾、香港なども含め1000企業が導入している。

髙橋恭介(たかはし・きょうすけ)
株式会社あしたのチーム代表取締役会長。一般社団法人人事評価推進協議会代表理事。1974年、千葉県松戸市生まれ。興銀リース株式会社を経て、2002年にプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。同社での経験を生かし、2008年、株式会社あしたのチームを設立、代表取締役社長に就任。
 

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