「カレーハウスCoCo壱番屋」の展開企業である壱番屋は9月28日、2021年2月期の第1~2四半期(2020年3~8月)の業績予想の修正を発表した。コロナウイルスによる危機的状況は変わらないが、前回予想よりも営業利益などの減少幅が小さくなった。海外事業のダメージが想定より小さかったことが幸いしたようだ。
壱番屋の業績予想は4月時点からどのように変わったのか?
今年の2月頃から拡大した新型コロナウイルスは、さまざまな経済的被害をもたらしている。壱番屋は4月6日、第1四半期決算の発表に合わせて第2四半期までの連結業績の予想を発表。想定し得る新型コロナウイルスの影響を盛り込み、売上高や営業利益、経常利益、純利益がそれぞれ大幅減となると予測した。
改めてその数字を確認してみよう。
- 売上高215億円(前年同期比16.3%減)
- 営業利益9億4,000万円(前年同月比68.6%減)
- 経常利益10億7,000万円(前年同月比65.4%減)
- 純利益4億1,000万円(前年同月比78.5%減)
特に純利益に関しては、約80%減となる危機的な状況にとなると見込んでいた。しかし今回発表された業績予想では、以下のように売上高を除いて上方修正されている。
- 売上高は微減の214億6,000万円(前年同期比16.2%減)
- 営業利益は1億3,000万円プラスの10億7,000万円(前年同期比64.2%減)
- 経常利益は1億7,000万円プラスの12億4,000万円(前年同期比59.9%)
- 純利益は2億6,800万円プラスの6億7,800万円(前年同期比64.4%)
経常利益、経常利益、純利益ともに前年同期比では依然としてマイナスになるという予想だが、それぞれの数字を積み増したということは、壱番屋の当初の「想定し得る新型コロナウイルスの影響」は想像よりも小さかったことになる。
なぜ壱番屋は業績予想を上方修正することができたのか
新型コロナウイルスによって多くのレストランチェーンが想像以上のダメージを受けている中、なぜ壱番屋は業績予想を上方修正できたのだろうか。壱番屋が9月28日に発表した「業績予想の修正に関するお知らせ」の中で、その理由が語られている。
壱番屋によれば、中国や米国などにおける海外子会社の既存店売上高が当初の予想を上回ったことが上方修正の要因だという。報道では、海外の既存店売上高は前年同期比で半分程度になると予想されていたが、3割減程度に留まったようだ。
壱番屋は「CoCo壱番屋」の業態で、2020年8月時点で国内では1,262店舗、海外では184店舗を展開している。海外店舗のうち48店舗は中国国内にあり、中国で新型コロナウイルスの感染拡大が他の国に比べて早く一服したことで、売上高の減少が抑えられた格好だ。
売上予想は微減だが、宅配需要に支えられて回復が鮮明
微減となった売上予想だが、壱番屋が発表した2020年8月度の月次情報によれば、回復がはっきり見て取れる。
2020年3月から前年同期比を追っていくと、以下のようになる。
- 3月90.1%
- 4月73.8%
- 5月79.5%
- 6月85.0%
- 7月89.3%
- 8月91.1%
この調子でいけば、年内に前年と同水準まで売上高が回復する可能性がある。外食を控えるムードが続く中で、売上が回復しているのはなぜだろうか。
壱番屋は、その理由を「店内で飲食をする客は減ったものの、客単価が高い宅配売上の構成比が上がったこと」と説明している。8月度の客単価は、前年と比べて2.9%増えているという。
最近は多くの消費者がデリバリーの利便性に気づき、Uber Eatsなどを利用する人が増えているという。CoCo壱番屋は店舗によっては宅配注文を直接受け、デリバリーにも注力している。宅配部門は、今後さらに売上を伸ばしていく可能性がある。
株価は順調に回復、全体を上回る右肩上がり
これに伴って、壱番屋の株価も順調に回復している。株式市場全体は3月に底をつけた後右肩上がりになっているが、壱番屋の株価はそれを上回るスピードで上昇している。
東証株価指数と比べてみよう。TOPIX(東証株価指数)は3月16日に1,236.34ポイントまで落ち込んだが、9月30日には約1.3倍の1,625.49ポイントまで回復。一方で壱番屋の株価は、同期間で3,705円から約1.5倍の5,620円まで回復している。
営業利益や経常利益は上方修正されたが、前年同期比では依然としてマイナスであり、予断を許さない状況だ。コロナの影響が長引けば、じわりじわりとキャッシュフローが悪化する。想定よりもダメージは小さかったが、油断は禁物。これが現在の壱番屋の状況と言えよう。
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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