損失の繰越控除とは何か?

損失の繰越控除とは、上場株式等の配当所得と損益通算しても年間の上場株式等の譲渡所得がマイナス、つまり譲渡損失(売買損)が生じた場合に、確定申告によって損失を繰り越し、翌年以降3年間の利益(譲渡所得および配当所得)から控除できる制度のことだ。翌年以降に利益が出た場合は、税金が安くなる。

損失が繰越控除の対象となる「上場株式等」に該当する商品は、以下のとおりだ。

  • 上場株式、ETF(上場投資信託)、REIT(上場不動産投資信託)
  • 公募株式投資信託、公募公社債投資信託
  • 国債、地方債、外国国債、公募公社債、2015年12月31日以前発行の公社債

非上場株式(未公開株)など、上場株式等に該当しない一般株式等の譲渡損失は、繰越控除の対象にならない。

ただし、一定の要件を満たす特定中小会社が発行した株式を上場前までに譲渡して損失が生じたケースで、一定の要件を満たす場合に限り、繰越控除の対象になる特例がある(特定中小会社の発行株式に係る譲渡損失の繰越控除)。

出典:国税庁「No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」より

NISA口座で生じた譲渡損失は対象外

NISA口座(少額投資非課税制度)およびジュニアNISA口座内で生じた譲渡損失はなかったものとされ、損失の繰越控除の対象にならない。

損失の繰越控除の例

損失の繰越控除を受けるには、譲渡損失が生じた年の翌年に一定の書類を添付して確定申告を行う必要がある。その損失について2年目、3年目に繰越控除を受けるには、株式等の譲渡の有無に関わらず、毎年連続して確定申告を行わなければならない。

<損失の繰越控除の例>

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
譲渡損益 ▲110万円 50万円 ▲10万円 30万円 50万円
配当金 10万円 5万円 5万円 10万円 10万円
損益通算後の
年間損益額
▲100万円 55万円 ▲5万円 40万円 60万円
2018年に生じた
損失の繰越額
100万円 45万円 50万円 10万円 −(※)
2020年に生じた
損失の繰越額
5万円 5万円 0万円
繰越控除後の
課税対象額
0万円 0万円 0万円 0万円 55万円
※編集部作成


複数の年で譲渡損失が生じた場合、譲渡損失が発生した年が最も古いものから先に控除される。3年経っても控除しきれずに残った繰越損失は、消滅する(※)。

譲渡所得の確定申告による扶養控除や配偶者控除の影響に注意

扶養控除や配偶者控除の対象になるかどうかは、繰越控除適用前の合計所得金額で判定される。損失の繰越控除の適用を受けるために確定申告を行うと所得金額が増え、扶養控除や配偶者控除に影響するおそれがある。

これまで源泉徴収ありの特定口座で取引しており、確定申告が必要なかった人は、確定申告を行うことで控除が減って不利にならないかどうか、事前に確認しておこう。

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