不動産投資は国内だけでなく、海外にも選択肢があります。今回は国内不動産投資とは異なる魅力を持つ、海外不動産投資のメリットとデメリット、投資する国を選ぶ際の判断基準や注意点の解説と、同じく海外の不動産に投資を行う金融商品である海外REIT(リート)との比較を行っていきます。
海外不動産投資のメリット
不動産投資では、人口増加や活発な経済活動などがプラスに働くとされていますが、国内では少子高齢化の深刻化に伴い2008年より総人口が減少に転じており、2050年には1億人を割り込むとも予想されています。
このように、縮小する環境下での不動産投資は、物件をかなり厳選しなければ、将来的に負担だけを増してしまう結果となりかねません。
しかし、世界に目を向ければ人口増加や経済活動が活発な国も存在しています。発展の追い風が受けられる海外で賃貸経営を行うことができれば、国内とはまた違った結果となることでしょう。
海外不動産の特徴は、拡大する市場の後押しを受けた賃貸経営を行えることや、賃料収入が海外の通貨で得られるため、為替差益による収入アップや資産の分散効果が期待できるほか、投資する国独自のメリットを得ることも期待できます。
例えばアメリカを対象とした海外不動産投資の場合は、以下のような特徴が見られます。
日本の賃貸借契約では入居者の権利が比較的強く保護されており、家賃の不払いといった債務不履行により契約を解除し、退去を求める場合は、3ヵ月以上の家賃の滞納に加えて入居者との信頼関係が失われていることが裁判によって認められることが必要になります。
また、裁判により退去が認められた場合でも、さらに数ヵ月程度の猶予が認められるため、滞納から明け渡しまでに多くの日数と労力が必要となります。
アメリカでの家賃の不払いによる退去は、日本よりも短期間で完了することが期待できます。
アメリカの法律的には、10日間程度家賃を滞納した場合、強制退去の申請を行うことが可能となり、入居者にもその旨の通知を行います。
それでも家賃の不払いが続く場合、裁判所による判決を経て、入居者の自主退去または保安官による強制退去が実行されるため、早ければ2ヵ月程度で問題を解決することも可能です。
しかし、複数の法的手続きや、物件に残置物などが残っている場合はオーナーが処分を行う必要があります。いずれも日本在住のままでは対応が困難なため、現地の管理会社によるサポートが欠かせません。
また、日本に比べ中古住宅の取引量も多く、物件の売却による現金化も比較的行いやすくなっているほか、築年数の経過したヴィンテージ・ハウスは値上がりが期待できる場合があります。
▽アメリカの海外不動産投資のメリット
- 為替差益による収入アップや資産の分散効果が期待できる
- 契約違反を繰り返す入居者を速やかに退去させることができる
- 築年数の経過したヴィンテージ・ハウスは値上がりが期待できる
- 現金が必要となった場合、国内に比べ売却を行いやすい環境にある
海外不動産投資のデメリット
海外不動産への投資は、数多くのメリットがありますが、下記のような国内不動産投資とは異なるデメリットも存在します。
投資用不動産物件取得費にアパートローンの利用が難しい
国内不動産を購入する場合であれば、不動産投資用物件の取得費にアパートローンなどの不動産投資ローンを利用することができます。ですが、海外不動産投資の場合は基本的に金融機関からの融資を受けることが難しくなります。
物件取得費は自己資金で取得することになるので、レバレッジ効果が活かしにくいといったデメリットがあります。不動産担保ローンやフリーローンなどの用途が制限されないローンを利用することもできますが、金利が高くなったり、融資の上限があったりします。
不動産所得が赤字の場合、減価償却費が差し引けない
不動産投資による収支は不動産所得に該当します。そのため、赤字が生じても事業・給与所得などの所得から赤字額を差し引くことのできる『損益通算』を利用することができます。不動産投資ではこの損益通算を利用し、建物の減価償却費を用いた節税効果がメリットの1つとなっています。
海外不動産投資においても、いままで減価償却費を計上できる不動産投資用物件を利用した所得税・住民税の節税が盛んに行われていました。
しかし、2020年の税制大綱により『国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例』が新設され、国外の不動産投資による収支が赤字の場合に、減価償却費を差し引くことができなくなってしまいました。
つまり賃料収入よりも減価償却費が大きい場合、不動産所得の損失は生じなかったものとされ、他の所得から赤字分を差し引くことができなくなりました。この特例のため節税効果は国内不動産投資の場合よりも限定されてしまうことになります。
海外不動産を取得するならどこがおすすめ?
海外不動産投資を行う際、基本的な指標となるのは、投資対象国の経済成長率や普通出生率です。継続して経営していくためには、現在の人口規模だけではなく、若年層が継続して賃貸市場に流入して来ることがポイントです。
また、不動産売買・登記関係の法律が整っており、物件取得や売却に際してのトラブルの恐れが少ないことや、外国人の不動産所有に対して規制が少ないことが重要といえます。
途上国ほど人口増加や経済発展は著しいのですが、外国人の土地所有が制限されていることも多く、登記や引き渡しなどの法整備の観点ではカントリーリスクが伴います。不動産投資を安全に行うにはイギリス・フランス・ドイツ・アメリカなどの先進国か、タイなどの先進国にくらべ経済成長率が高く、外国人でも不動産所有が可能な場合のある途上国を中心に検討することをお勧めします。
海外REIT(リート)との相違点
不動産投資というと、近年注目されることの多い金融商品である海外REIT(リート)が想起されます。海外リートは証券市場に上場されていることもあり、流動性が高く少額の資金で始めることができます。
不動産投資とREIT(リート)の相違点は、国内においては、資金のレバレッジ効果と減価償却費の計上による節税効果の有無が大きなところです。REITは金融商品ですので、当然減価償却費の計上はできません。一方、海外不動産投資ではレバレッジ効果が利きにくく、減価償却費の計上による節税効果も行えなくなってしまいました。しかし、海外不動産投資と海外REITの差が縮まったわけではなく、仕組上大きな違いが存在しています。
運用する不動産のタイプが違う
海外不動産投資では、賃料収入が景気動向に左右されにくく、物件取得費が比較的少なくて済むマンションや中古戸建などの住宅系が主に利用されていますが、REIT(リート)ではさまざまな物件へ投資することが可能です。
例えばアメリカで運用されている海外REITでは住宅の他に、ショッピングセンター等の小売店・老人ホームなどヘルスケア施設など、個人では取得額が高く投資対象となりづらい物件にも投資が行える特徴があります。
価格が変動しやすい
海外REITではその流動性によって価格が日々変化します。景気が悪化すると市場が予想した場合、価格が大きく下落する恐れもあります。また海外REITによる損失は申告分離課税となるため、同じ分離課税内でのみ通算することができ、万が一赤字となっても他の所得と損益通算することはできません。
海外不動産投資では、物件価格は個別性が強くキャピタルゲインも期待することができます。また、売買で損失となっても譲渡所得に区分されるため、不動産所得と同様に他の所得と損益通算を行うことができます。
発生する経費に違いがある
不動産投資で生じる経費は、固定資産税や管理・修繕費などが挙げられますが、海外REITではこれに加えてREITを運営している不動産投資法人の取り分も差し引かれるため、リターンが低下しやすくなります。
海外不動産投資を行う際の注意点
海外不動産投資を行う場合に注意しなければならない点は、現地との情報格差にあります。以下のようなことについて、国内にいる個人で行うのは難しい場合があります。
▽海外不動産投資における現地との主な情報格差
- 取得する物件の検索や現況・周辺環境の情報収集
- 物件の取得や売却
- 居住者の募集や維持・管理
賃貸経営の実際の業務は現地の業者に委託することになります。この点で、委託先が信用できる業者か判別が難しく、距離があるため監査によって働きぶりを確かめることができません。必然的に委託先の業者からの情報に依存し、言いなりになってしまうようであれば、投資家は業者との利益相反のリスクを負う恐れがあります。
情報格差を埋めるため、国内で海外不動産投資の仲介を行っている国内の代理店などを利用して、現地をしっかりと把握できるようにしておきましょう。
税制改正により海外不動産物件も厳選の時代へ
海外不動産投資は経済発展の恩恵を受けることのできる国での賃貸経営により、優れたリターンや通貨・資産の分散効果を狙うことができる資産運用方法です。
しかし2020年の税制大綱により、海外不動産投資の収益が赤字となった場合、建物の減価償却費が差し引くことができなくなってしまい、節税効果が限定的なものとなってしまいました。制度変更以前は盛んに行われていた減価償却費による節税ありきの投資戦略は今後大きな変更を余儀なくされるでしょう。
今後は賃料収入の確保と諸経費・減価償却費の抑制による賃貸経営の黒字化が重要となります。そのためには国内の代理店との連携を強化し、現地の情報収集と信頼できる管理業者発見や収益化が見込める物件を取得することが投資成功のカギといえるでしょう。
提供元・JPRIME
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