不労所得、そして年金を補完する収入として不動産投資を始めるケースは多く、最近では若い世代や低所得者層の参入も目立ちます。しかしながら、何もせず収益が発生するはずはありません。うまく活用できるかどうかは、投資する資産額ではないようです。よく言われる不動産投資のメリットとその現実、失敗の要因を知ることで、収益の発生する不動産投資をめざしましょう。

目次

  1. こんなはずじゃなかった。不動産投資の失敗事例
  2. よくある失敗の原因となる「表面利回り」のワナ
  3. 投資に共通する「情報収集」「リスク許容度」
  4. 不動産投資を始める際に検討したいポイント
  5. 長期的目線で戦略的に考える
  6. 不動産投資がうまくいかないときの対策
  7. 見落としがちなポイント「いつまで続ける?」
  8. まとめ

こんなはずじゃなかった。不動産投資の失敗事例

超低金利時代、貯蓄では資金が増えないため投資に目を向ける方が増えています。「頭金なしで始める」「リスクゼロ」「不労所得」といったキーワードの不動産投資広告が目を引きます。よくわからないまま不動産営業マンの話を鵜呑みにして物件購入に踏み切るケースも散見されます。

一方で、「思った通りの収入が得られない」「ローンが支払えない」「こんなはずじゃなかった」と自宅を手放す事例やトラブルもあります。

賃料収入はローン返済に充てるため、長期間にわたり実益は多くを見込めません。副業として考えがちですが、しっかりと収入を得られるのはローン完済後であり、不動産投資は資産形成の手段のひとつにすぎません。また、現状把握と収入を得るためには努力が必要であることに気づくには時間がかかるようです。

本来であれば、不動産投資を始める際に知っておきたいポイントは以下の通りです。

不動産投資で知っておくべきポイント1:空室率を想定

常に入居者がいれば継続して家賃収入を期待できますが、入居者の入れ替えがあることを前提に考える必要があります。退去後すぐに新しい入居者が入ればよいのですが、空室が続くと収入が途絶えます。

不動産投資で知っておくべきポイント2:賃料の下落

新築物件は賃料が高くても入居希望を見込めますが、2〜3年経過すると周囲の物件と同じ中古物件です。入居者を確保するためには、周囲の物件にあわせた賃料設定が必要になる場合もあります。

不動産投資で知っておくべきポイント3:サブリース契約の更新もしくは解除

サブリース契約であれば、空室や賃料下落への保証となるため安心といわれていますが、数年後に賃料の見直しで下げられたり、解除されてしまったり、という事例も見られます。

不動産投資で知っておくべきポイント4:金利上昇

一般的に自宅用の住宅ローンと比較すると、投資用ローンの金利は高めです。借入金利の上昇時には、賃料収入ではまかないきれず、不労所得のつもりが、ローン返済のために働くという本末転倒な状態になる可能性があります。

不動産投資で知っておくべきポイント5:修繕費

築年数とともに建物や設備も老朽化します。中古物件の場合には、同時期に各所で修繕が必要になる場合もあります。

不動産投資で知っておくべきポイント6:災害や入居者トラブル

自然災害や入居者トラブルに悩まされるケースも多くみられます。賃貸人(オーナー)は、使用収益(入居者が支障なく生活できるようセキュリティ対策や共用部分など適切に配慮)の義務や修繕の義務を負います。

よくある失敗の原因となる「表面利回り」のワナ

一般的に、提案資料にある「表面利回り」は、年間賃貸料÷物件価格×100で計算します。

▽【表面利回り】価格4,800万円で賃料20万円(年間240万円)の物件を購入した場合
(20万円×12ヵ月)÷ 4800万円 ×100= 表面利回り5%

ただし実際は、管理費、固定資産税などのコストがかかりますし、空室も想定する必要があります。空室リスクをどのように捉えるかは、物件の周辺事情や過去のデータによりますが、一例として、徒歩5分以内なら5%、5分超10分以内なら7%、10分超なら10%等、駅からの距離で想定することもできます。また、投資額には、物件価格だけでなく登記や手数料が含まれます。

▽【想定利回り】
年間コスト34万円(管理費24万円、固定資産税10万円)、空室損失16.8万円(満室賃料の7%)
初期費用240万円(物件価格の5%)と仮定した場合
(240万円 - 34万円 - 16.8万円)÷(4800万円 + 240万円)×100 = 想定利回り3.75%

表面利回りで表示される広告や提案書ではなく、不確定要素を踏まえた利回りを検討する必要があります。

なお、購入後の年間収支を考える場合には、ローンの金利負担を考慮します。借り入れ当初は、返済額のうち利息負担比率が高いため、利回りは更に下がります。返済が進むにつれ改善されますが、数字の推移を見ることも大切です。

投資に共通する「情報収集」「リスク許容度」

不動産投資に限らず、投資にあたって共通するポイントは、以下の2点です。

営業トークの心地よい情報に振り回されない

営業トークの真偽を確認し、ウラをとり、背景を知る努力を怠らないようにしましょう。複数の情報を比較検討するのがよいでしょう。

リスク許容度を検討する

人により経験値や趣向、価値観は異なります。高いリターンを求めるのであればリスクをとる必要もあります。不安がある場合にはリスクもリターンも抑えるなど、自分自身の投資への基本姿勢を知るべきです。

不動産投資を始める際に検討したいポイント

長年物件を所有していても、自分の物件を一度も見たことがない、というオーナーさんもいます。最近では、駅前再開発などにより、ものすごいスピードで街が変貌を遂げ、土地の価格が局地的に大きく変動する場合もあります。エリア特有の情報をどこまで自分の耳でキャッチできるかについても不動産投資成否のカギといえるでしょう。具体的に確認したいポイントは以下の通りです。

どこに:エリア、駅からの距離

入居率を優先するならば、交通至便な駅近物件がよいでしょう。ただし、このような物件は価格が高めです。近隣に大学がある、途中にコンビニがある、ショッピング施設がある、公園があるなど、エリアとしての強みを確認することも重要です。

どんな:物件、築年数、構造、間取り

マンションかアパートか、新築か中古か、鉄筋か木造か、ワンルームか2LDKか、などさまざまな選択肢があります。近隣の賃貸環境や購入後に発生する修繕リスクなどもふまえた検討をおすすめします。

どのように:借入れ条件、返済期間

長期ローンの場合には、返済額が抑えられることで月々の手取り収入が増える一方、総支払額が多くなりトータルで考えるとマイナスになる場合があります。短期ローンもしくは繰り上げ返済をした場合には、当初はマイナス経営になりますが、早い段階で完済することで収益を生み出す資産とすることが可能です。

だれから:不動産業者

過去の実績や評判、担当者の勤続年数などから信頼できる不動産業者や担当者を選ぶことがポイントとなります。

アフターフォローもなく、賃借人不在により住宅ローンが払えず、破たんするケースがみられます。「かぼちゃの馬車」事件にみる建築コストの水増しやずさんな融資のニュースは、記憶に残っていることでしょう。“賃借人に長く住んでもらえる”工夫を共に考えられる担当者であれば安心です。

だれと:管理会社

賃料の収納・管理、修繕といった物件管理は、個人でやろうとすると時間と労力が負担となります。コストと業務内容を複数の会社で比較検討のうえ選びたいものです。

長期的目線で戦略的に考える

不動産投資は、資産形成の手段のひとつとして有効です。長期にわたって継続できる環境づくりが重要であるため、始める際に検討すべきことが多くあります。上記の物件事情や資金計画に加えて、自分自身のライフプランをトータルに考えましょう。

築15年の物件を30歳で35年ローンにて購入し、老後の公的年金の補完を目的とした場合、65歳時には築50年となり期待通りの収入が得られるのかは疑問です。このような場合、当初は低価格で物件購入で早期にローン完済を目指し、売却により別の物件への再投資に移行するというプランも検討できます。初回投資物件は、時間が経過しても土地の価格変動の起こりにくいエリア選択がポイントになります。

都心の駅近マンションは、投資できる価格と隔たりがあるかもしれません。古い木造でも駅近なら入居希望者が期待できる場合も多くあります。初期段階、5年後、10年後をイメージして戦略を立てることが投資を成功に導くのではないでしょうか。

不動産投資がうまくいかないときの対策

不動産投資を始めるにあたってのポイントや注意点を説明してきましたが、すでに始めており、うまくいっていないと感じる人もいらっしゃるかもしれません。そういった方々に向けての今後の対策をご紹介しましょう。

対策1:手持ちの物件での立直し

過去の投資実績を見直してみましょう。数字と向き合うことで現実を知り、立て直しが可能な場合も多くあります。

以下のように検討できることはいくつかあります。

  • 空室率を実績から予測する
  • 管理体制や契約条件を見直す
  • コスト構造を改善する
  • ローン組替えや繰り上げ返済など借入れ条件を変更する

対策2:物件入替え

不動産投資の魅力のひとつとして考えられるのが、レバレッジ効果です。少ない自己資金でも借入れという他人資本を活用することで、大きな利益を生み出すことが可能です。

現在の物件を客観的に分析し判断することで、このままでは、将来的な収益が見込めないのであれば、入替えもしくは追加投資の検討は選択肢のひとつです。一旦売却により現金化したうえで、より投資効率のよい物件へ入れ替えることや追加投資によりリスク分散も可能となります。リスク分散とは、違ったタイプの物件(駅から離れた築浅マンションと駅近の木造アパート)を持つことで、空室リスクや運営コストを平均化させるイメージです。

対策3:撤退

誰でも何もせずに利益をあげられるものではありません。事業として取り組めないと判断した場合には、早期撤退もひとつです。

不動産投資に限らず、自分には不向きと別の投資手段に切り替える投資家は多く存在します。積み立て投資など定期的に着実に積み上げていく資産形成も選択肢です。何よりも入居者が決まらず収入が途絶えることを不安に思いつつ過ごす毎日よりも自分にあった投資手段を見つけたいものです。

見落としがちなポイント「いつまで続ける?」

思い通りの利益が毎月発生していたとしても、その後のことについて対策ができている投資家は意外と少ないのが現状です。

元気なうちは問題なくとも、年齢が上がるにつれ認知症や介護状態になる可能性は高まります。自分が認知症になった場合には口座凍結されることも想定しておきたいところです。困るのは、周囲の家族です。家賃収入があるのに、施設に払う現金がない、売却ができないといったトラブルが発生します。

また相続発生時には不動産という財産があるものの、相続税の納税資金が準備できない場合や複数の物件のうち誰がどの物件を引き継ぐかで揉める事例が多発しています。

元気なうちは先延ばしにしがちですが、いつまで家賃収入のある生活を継続するのか、将来的に売却するのか、早い段階で引き継ぐのか、相続で誰にどのように引き継ぐのか等のゴールを決めておきましょう。

まとめ

不動産投資は資産形成の手段として有効といえます。成功させるためには、物件選び、想定リスクといった購入時のポイントに加え、継続した現状把握や数字的観点からの分析など長期的視野で考えることが大切です。

収益をあげ続けるためには、継続入居が前提となります。「ここに住みたい」「住み続けたい」と入居者が思えるような、物件価値を維持するための努力は怠らないよう心がけたいものです。

文・大竹麻佐子/提供元・JPRIME

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