そもそも筋肉の脂肪化とはどんな現象か?
研究者たちが新たな切り口としたのは、筋肉の脂肪化現象です。
筋肉は通勤・通学などの日々の運動によって維持されていきますが、テレワークなどにより運動習慣が途絶すると急激に減少しはじめます。
このとき体の中では、不要になった筋肉をただ分解するだけでなく、脂肪に置き換えるという興味深い現象が起こります。
これは、病気や飢餓に対抗するために生物が長い進化の過程で身に着けたエネルギー節約術。
筋肉は安静時であっても多くのエネルギーを消費するため、病気や飢えによって動けないときは維持費がかかります。
生物は燃費の悪い筋肉をカロリー源である脂肪に両替することで、生き残りをはかるのです。
本来ならば先祖が遺してくれた有難い能力なのですが…飽食の時代では毒となります。
筋肉の脂肪化が進むと消費カロリーが減少し、食事量が変わらなくても肥満を経て糖尿病になる恐れがあります。
また筋肉の脂肪化は一見して痩せているようにみえる人間でも起こることが知られており、隠れ肥満の原因にもなりえます。
しかし既存の歯周病菌の研究は典型的な糖尿病(代謝異常)との関係に焦点が向けられており、筋肉の脂肪化現象に発する糖尿病は盲点となっていました。
そこで今回、日本医科歯科大学と佐賀大学の研究者たちは、この「筋肉の脂肪化現象」と歯周病菌との関係を調べることにしました。
歯周病菌が筋肉の脂肪化に関連しているとの説が正しければ、歯周病菌は単にメタボや糖尿病の要因となるだけでなく、筋肉をこそぎ落す恐ろしい力を持っていることになります。
実験と検証を行った結果は驚くべきものでした。