チェコのチェコ科学アカデミー考古学研究所(IACAS)を中心とした研究チームは、約3万年前の旧石器時代の狩人が使っていたと考えられる「個人用の道具箱」とも言える29点の石器セットを発見しました。
石器の大半には実際に使われた痕跡が明確に残っており、破損した小さな欠片までも資源が乏しい状況で再利用した可能性が示されています。
石材の産地は100キロ以上離れた遠方も含む複数の地域にわたり、当時の人々が広範囲な交流や移動をしていた様子もうかがえます。
しかし3万年前の狩人はどんな理由でこの貴重な道具セットを丸ごと残してしまったのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年8月13日に『Journal of Paleolithic Archaeology』にて発表されました。
目次
- 3万年前の道具箱の中身を徹底分析
- 旧石器時代の狩人の謎—なぜ道具を残したか?
3万年前の道具箱の中身を徹底分析

ふつう旧石器時代の遺跡で見つかる道具は、長い年月の間に色々な時代や多くの人々が残したものが混ざってしまい、「誰が」「いつ」「何に使ったか」をはっきり示すことはほとんどありません。
たとえば、あるキャンプの跡から石器が出ても、そこが長い間に何度も利用されていれば、たくさんの人が使った道具が重なってしまい、どの道具が誰のものか特定することは難しいのです。
しかし、今回チェコ南部のミロヴィツェ第IV遺跡で見つかった道具セットは、そうした一般的な状況とは大きく異なっていました。
なんと、合計29個もの小さな石器がひとつの塊として出土したのです。
これは例えるなら、約3万年前に暮らしていた狩人が使っていた「個人用の道具袋」を、そっくりそのまま手に入れたような貴重な発見なのです。