植物においても同様で、麻酔薬が特定の受容体を介して作用しているのか、あるいは細胞膜の構造や柔軟性を変化させることにより間接的に作用しているのかが明らかになっていないのです。
今後の研究としては、遺伝子操作が容易なシロイヌナズナ(Arabidopsis)などのモデル植物を使い、麻酔薬に特異的に反応するタンパク質や膜の性質を詳しく分析する必要があります。
また、植物が自ら生成する天然の麻酔物質(エタノール、エチレンなど)についても詳しく調べることで、植物が進化の過程でなぜこれらの物質を作り出したのか、その意味や役割を明らかにできるでしょう。
さらに、植物で麻酔が効くメカニズムがより詳細に解明されれば、動物や人間の麻酔作用の基礎理解にもつながることが期待されます。
植物を使った新たな実験モデル(研究のために役立つ実験対象)としての可能性を探ることが、次の重要なステップになるでしょう。
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元論文
Anaesthetics stop diverse plant organ movements, affect endocytic vesicle recycling and ROS homeostasis, and block action potentials in Venus flytraps
https://doi.org/10.1093/aob/mcx155
Effect of the General Anaesthetic Ketamine on Electrical and Ca2+ Signal Propagation in Arabidopsis thaliana
https://doi.org/10.3390/plants13060894
Diethyl ether anesthesia induces transient cytosolic [Ca2+] increase, heat shock proteins, and heat stress tolerance of photosystem II in Arabidopsis
https://doi.org/10.3389/fpls.2022.995001