眼球が破裂・脱落し、視力を永久に失う

  • 鼻が根元から全てちぎれ取れる

  • 下顎骨や口唇の大部分が失われる

  • 頭蓋骨が露出するほど頭皮が剥がれる

  • 全身にわたる広範な裂傷や骨折、出血性ショック

  • 上述のような状態を示したクマ被害の現実を本当に知りたい方は、自己責任で論文中の画像や図版をご確認ください(ショッキングな内容を含みますので、閲覧には十分ご注意ください)。

    • 鈴木真輔ら「クマによる顔面外傷13症例の検討」『頭頸部外科』28巻2号, 2018年

    • 齊藤景ら「当院におけるクマ外傷9例の検討」『創傷』12巻2号, 2021年

    メディアでは軽症の被害談がクローズアップされがちですが、実際にはこのような命を脅かす重篤な被害も多数報告されているということを忘れてはなりません。

    ここで紹介されているのは全て本州のツキノワグマによる被害です。クマというと北海道のヒグマが恐ろしいという話はよく話題に出るものの、ヒグマに比べて体の小さい本州のツキノワグマは、そこまで危険ではないと考える人も少なくありません。

    特にツキノワグマは基本的に人を避ける習性があると言われるため、出会っても適切に対処すれば、安全にやり過ごせると考える人もいるようです。

    しかし上述の通り、本州の「体が小さいツキノワグマ」であっても、襲われれば命に関わるような重傷を負う危険性が非常に高いことが、実際の医療現場から明らかになっています。

    ではこの報告にあるような被害は、実際どのような状況で起きているのでしょうか?

    多くは対処する間もなく襲われている

    今回紹介した症例の被害者は、決して「対処を誤ったから」クマからひどい攻撃を受けたというわけではありません。

    秋田大学の調査(1995〜2017年の13例)や山梨県立中央病院の報告(2000〜2020年の9例)を見ると、ツキノワグマによる重傷被害は普段の生活や仕事の延長線上で発生していることがわかります。