研究チームは、地層の中に小さなガスの“湧出口”があると仮定し、そこからガスが地表に向かってゆっくりとしみ出していく様子をシミュレーションで再現しました。
シミュレーションの結果、地盤の中はまるで水分を含んだスポンジのような状態になり、ガスと水分(地層中の水)が押し合う「二相流(two-phase flow)」という現象が生じることがわかりました。そしてこのモデルでは、ガスの圧力が十分に高まると地層が局所的に盛り上がったり沈み込んだりし、その影響で地表に円形の凹地(fairy circle depressions)が形成される様子が再現されたのです。
なお、このシミュレーションで再現された円形の凹地は、直径が約120メートルから400メートルという大きなサイズでした。そのためこの形成原理は、既存の理論で説明されてきた数メートル規模のフェアリーサークルの形成方法を否定するわけではありません。
また、この研究ではシミュレーションに「天然水素ガス(水素混合ガス)」が用いられています。
理論上は窒素やメタンなどのガスでも問題はありませんが、研究チームは水素を選択した理由として、水素は地球上で最も軽く、反応性の高い元素であり、再生可能エネルギーとしても期待されているためだと説明しています。
これまで水素は地表の岩石反応や深部の熱水活動によって生成されることが知られてきましたが、実際に地表付近で天然水素が湧き出している事例は世界的にもまだ珍しい状況です。
もしフェアリーサークルの形成に地下に埋蔵された水素の湧出が関わっているとしたら、謎のサークルが単なる地形の不思議にとどまらず、地球が秘める新たな資源探しの重要なヒントになるかもしれません。
天然水素を油田のように利用できるのか?
もし地球の大地が、私たちの暮らしを支える“クリーンエネルギー”を静かに生み出していたとしたら、そんな夢のような話が、いま現実味を帯びつつあります。