つまり、量子もつれをこの「暗い状態」の中に閉じ込めてしまえば、量子の繊細な情報を外部の影響から守り、より長期間維持することが可能になると予想されてきました。
理論的な研究では以前からこの可能性が示されていましたが、実際に安定した暗い状態を作り出してその長寿命の性質を確かめるのは、これまで難しい課題でした。
今回の研究チームは、この理論的なアイデアを実験的に確かめることを目指しました。
そして実験の結果、実際に「定常的なサブ放射(暗黒状態)」という暗い状態を作り出し、光との相互作用が非常に弱くなったため、量子もつれを保つために必要な量子相関が通常よりはるかに長く維持できることを確認しました。
この結果は、量子情報をノイズから守る「究極の盾」を手に入れる可能性を示しています。
この「闇に隠れた量子の宝物」を自在に操ることができれば、量子コンピューターや量子通信、そして超高感度センサーなど、未来の多くの分野で革命的な進展が期待できるでしょう。
「壊れやすい量子情報を守る『暗黒のシェルター』の作り方

今回の研究チームが取り組んだ課題は、「量子もつれ(離れた粒子が見えない絆でつながる状態)」をいかに長く安定に維持するかというものでした。
そこでチームが選んだ材料は「量子ドット」という非常に小さな半導体粒子です。
量子ドットはしばしば「人工原子」とも呼ばれ、その名の通り、原子のように小さく量子力学の不思議な性質を示します。
今回の実験では、この量子ドットを2つ用意し、これらの間で量子もつれを作ることを目指しました。
次に、研究チームは、この2つの量子ドットを効果的に量子もつれさせるために特別な装置を設計しました。