暗黒物質とは、目には見えないけれど重力を持ち、宇宙の物質の多くを占めていると考えられている謎の物質です。

原始ブラックホールがもし暗黒物質の一部だとすれば、なぜ暗黒物質が見えずに重力だけを通じて宇宙に影響を与えているのかも説明できるかもしれません。

このように、原始ブラックホールは超大質量ブラックホールが宇宙の初期に存在している謎だけでなく、宇宙全体を理解するための新たな鍵になる可能性があるのです。

では、どうすればこれらの仮説を確かめられるのでしょうか?

宇宙最初の1秒でブラックホール誕生か?

宇宙誕生から1秒未満では僅かな密度の偏りでブラックホールがポンポン生まれます
宇宙誕生から1秒未満では僅かな密度の偏りでブラックホールがポンポン生まれます / Credit:川勝康弘

どうすればビッグバンから1秒未満で誕生した原始ブラックホールがあることを確かめられるのか?

この謎の答えを得るには、初期宇宙の非常に遠い場所を実際に観測して詳しく調べる必要があります。

しかし、宇宙は非常に広く、遠くの天体の光は地球に届くころには非常に弱くなってしまいます。

そこで活躍するのが、2021年末に打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)です。

JWSTはハッブル宇宙望遠鏡の後継機で、赤外線という目に見えない光を使って観測を行います。

赤外線は宇宙空間にあるガスや塵を通り抜けやすく、非常に遠くて古い時代の光を鮮明にとらえることができます。

このためJWSTは、宇宙が生まれてまだ間もない時期の星や銀河、ブラックホールを観測するための最適な望遠鏡として、大きな期待を寄せられてきました。

JWSTが観測を始めて以来、研究者たちは宇宙の非常に遠い場所にある謎の天体を次々と発見しました。

それらは赤外線で観測すると非常に赤く、小さな光点として見えるため、「リトル・レッド・ドット(LRD)」と呼ばれるようになりました。

LRDの正体は明らかになっていませんが、多くの天文学者は、これらが宇宙初期に生まれたばかりの超巨大ブラックホールではないかと考えてきました。