さらに市民参加型の運営を推進するため、静岡市の住民を対象としたイベントやワークショップを定期的に実施するのも、公金を投入された施設として必須となる。清水の山室晋也社長も8月23日のインタビューで、「サッカー王国にふさわしいスタジアムになれば」と語っている。(出典:SBS静岡放送)

未来のJクラブスタジアムの在り方
これらの提言は、清水の新スタジアムがJリーグ全体のモデルとなることを目指すためのものだ。従来のスタジアムはサッカーの試合が中心だったが、多目的化により収益を安定させ、せめて維持費くらいはクラブの自助努力で捻出したいところだ。
ロンドンのトッテナム・ホットスパー・スタジアムがアメリカンフットボール(NFL)の試合やコンサートを誘致し、年間収益を増やした例もある。清水でもこうしたアプローチで、維持費の確保と静岡市の観光活性化に寄与できるのではないだろうか。
しかしながら、問題がないわけではない。同市駿河区のJR東静岡駅前にはコンサートや劇場、コンベンションセンターとしても活用されている「グランシップ静岡(静岡県立コンベンションアーツセンター/1999年開場)」が存在する。いくら静岡市が人口66万人を超える大都市でも、“ハコモノ”の多さは否めない。両者がイベントやコンサートの食い合いをすることだけは避けなければならない。
残る課題は資金調達と維持管理だ。難波市長が参考に挙げたエディオンピースウイング広島は、300億円に届かない額で竣工されたが、テレビ静岡によれば、現状、建設予定地のENEOS製油所跡地には石油貯蔵タンクが残されている状態であり、用地を取得出来たとしてもタンク解体や土壌対策などの課題も残されている。
よって建設コストは400億円を超えるのではないだろうか。これを全て公金で賄うことは不可能であり、民間投資は絶対条件だ。鈴木知事は8月15日、「まちづくりの観点で効果的」と述べたが、詳細は今後の検討次第だ。最終的に、清水の新スタジアムが真に市民のための場となるよう、建設費用の面や完成後の運用面も含め、透明性の高いプロセスで進めることが重要となる。