モナコ公国自体が狭小であるため、スタジアムの下層部分を多機能化し、観光資源としても活用。結果、年間来場者はサッカー観戦者以外で約10万人と推定されている(具体例として、1998年から2012年まで15年連続でUEFAスーパーカップが開催され、多くの収入を生んだ)。
このアプローチは、土地の制約が厳しい日本のサッカースタジアム建設の参考になる。モナコ公国が施設を運営し、ASモナコのオーナーのドミトリ・リボロフレフ氏が投資を主導したことで、非試合日の収益を上げた。
また、セルビアのベオグラードにあるスタディオン・ヴォジュドヴァツは、FKヴォジュドヴァツ(セルビア2部)のホームで、2013年に完成した収容人数約5,175人の小さいスタジアムだが、その特徴は4階建てショッピングセンターの屋上に建設されている点で、商業施設との一体型開発を実現している。ピッチは人工芝だが、試合日以外には屋上イベント等で活用され、2024年は試合日以外でもショッピングセンターの来客をスタジアムイベントに誘導することで、相乗効果を生んでいる。
この屋上ピッチの活用は、空間を垂直に活かす革新的な方法だ。民間デベロッパーとクラブの連携で建設され、ショッピングセンターの運営会社がスタジアムの維持費を一部負担。結果、クラブの負担を軽減し、地域住民の日常利用を促進している。
これらは、清水の新スタジアムが“駅前スタジアム”として計画される中で、大いに参考になるのではないだろうか。
難波市長は8月21日の会見で、新スタジアムを3万人規模とした上で、津波対策として「土地のかさ上げをする」と明言したが、そのかさ上げ部分を活用する方法が考えられる。新スタジアムは南海トラフ地震の際の防災拠点としても生かされる計画だが、そこにテナントを作り、鈴与の本社が入居するのも1つの手だ。
