一方、難波市長は、「参考になるのは広島のスタジアム(2024年開場の「エディオンピースウイング広島」)」と語り、その総事業費286億円のうち、国の補助金や企業と個人からの寄付金が約6割で、広島県と広島市の負担を合計約80億円にとどめたことに対し「上手におやりになりましたね」と評価した上で、官民連携で建設を進めたい考えを示した(出典:テレビ静岡)。

難波市長も鈴木知事も「民間資金の活用」という点では一致していることから、新スタジアム建設に伴う投資をいかに呼び込むかがこれからの課題となる。2氏ともに明言こそ避けているが、内心では清水のオーナー企業であり、約140社のグループ全体で総売上高5,310億円(2023年8月期)を誇る鈴与グループからの出資を待ち望んでいるのではないだろうか。街作りを主導する事業主体が地元企業であれば、自治体も市民も安心してエリアマネジメントを任せられるだろう。

そしてもう1つの課題は、「試合日以外の活用法」だ。IAIスタジアム日本平ではほぼ清水の“独占的使用”が許されていたが、街中スタジアムとなればそうもいかない。額の大小にかかわらず公金が投入されるのであれば、「税リーグ」などと言われないために市民のための場でなければならない。


モナコ 写真:Getty Images

海外の先進事例から学ぶ多目的活用

海外のサッカースタジアムでは、多目的利用が収益安定と地域貢献の鍵となっている。

例えば、フランスのリーグ・アンのASモナコの本拠地であるスタッド・ルイ・ドゥは、1985年に開場した収容人数約1万8,500人のスタジアムだが、サッカーのリーグ戦や国際試合だけでなく、陸上競技最高峰のリーグ戦「ダイヤモンドリーグ」やコンサートなどに活用されている。2024年、年間のイベント数はサッカー試合以外だけで約20回を超え、周辺のプールや体育館と複合化することで、日常的なスポーツ施設として機能している。