果たして哲学そのものに頭を良くする効果はあったのでしょうか?

哲学は人を賢くする?大規模データで検証

哲学は人を賢くする?言語と論理の伸びを大規模データで検証
哲学は人を賢くする?言語と論理の伸びを大規模データで検証 / Credit:Canva

今回の研究チームは、「哲学を学ぶと本当に頭が良くなるのか?」という問いを、できるだけ公平に調べようとしました。

しかし「哲学を学ぶことで頭が良くなるのか」を確かめるのは、簡単ではありません。

なぜかというと、哲学を選ぶ学生はそもそも優秀な人が多いからです。

最初から頭の良い人が哲学を選び、そのため哲学科の成績が高くなっている可能性もあるのです。

これを「自己選抜」と呼びますが、この影響を取り除かなければ、本当に哲学の学習が力を伸ばしたかどうかは判断できません。

そこで研究者たちは、アメリカ全土にある800を超える大学から集まった約60万人もの学生のデータを使って、この問題に挑むことにしました。

まず、大学入学時に学生たちが受けるSATという試験の結果を見て、それを元に学生たちがもともと持っていた能力の差を推測します。

SATとは、高校生が大学に進学する際に受ける標準的な学力試験で、主に「言葉の能力」と「数学の能力」を測るものです。

このSATの点数を参考にすれば、「最初の時点でどれくらい優秀だったか」を大まかに把握できます。

その上で、大学卒業前に受ける2種類の別の試験の結果と比較することで、「入学後にどれだけ能力が伸びたのか」を調べることにしました。

1つ目はGREという大学院入試のテスト、2つ目はLSATという法科大学院の入試テストです。

GREは大学院に入るための試験で、「言葉を使う力」と「数学を解く力」を試すものです。

LSATは法科大学院への入学試験で、特に「論理的な思考力」と「文章を正しく理解する能力」を測る試験です。

つまり、この調査で研究者がやったことは、「入学時の能力が同じだったとして、卒業するとき哲学科の学生のほうがテストで高い点数を取っていたかどうか」を統計的な方法で調べる、ということです。