GREは大学院への入学試験で、主に「言葉の力」と「数学の力」を評価します。
一方、LSATは法律専門大学院への試験で、「論理的な思考力」と「文章を理解する能力」を問うテストです。
哲学科の学生たちは、特に「言葉の運用能力」と「論理的思考力」を評価する試験項目で、目立って良い成績を収めていました。
さらに哲学を学んだ人は、そうでない人に比べて、「じっくり物事を考える習慣」や「異なる意見にも耳を傾ける開放的な態度」が高いことも分かっています。
こうした事実をもとに、多くの大学の哲学科やアメリカ哲学協会は、「哲学を学ぶことで思考力が鍛えられる」と宣伝しています。
ところが、ここで注意しなくてはならない問題があります。
それは「もともと頭がいい人が哲学を選んでいるだけではないのか?」という疑問が根強く残っていることです。
たとえば、もともと言語能力が高く、いろんなことに興味を持ちやすい好奇心旺盛な学生が哲学に集まっているとしましょう。
そうすると当然、卒業時の成績や思考習慣においても哲学科の学生の平均値は高くなってしまいます。
つまり哲学という教育そのものに力があるのではなく、学生が最初から優秀だから結果的に良く見えているだけ、ということになってしまいます。
実際、この研究でも、入学時点で哲学を専攻しようと考える学生は、他の学生よりも言葉の運用力や好奇心、さらには異なる意見を受け入れる姿勢などの点で、すでに高いスコアを持っていたことが確認されています。
そのため、哲学という専攻が本当に人の能力を伸ばしているのかどうかは、丁寧な検証が必要だったのです。
こうした疑問に決着をつけるため、今回アメリカにあるウェイクフォレスト大学とノースカロライナ大学チャペルヒル校の共同研究チームは、大規模な調査を行うことにしました。
そこで今回、ウェイクフォレスト大学とノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者たちは「哲学が好きな人は元から頭が良かった説」と「哲学には頭を良くする効果がある説」のどちらが正しいかを検証する大規模調査を行うことにしました。