たとえば、2000年代からはDOAJ(ディーオーエージェー:Directory of Open Access Journals)という国際的なボランティア組織が登場しました。
この団体は、「信頼できるオープンアクセス誌」を登録リストで公開し、その基準に合格した雑誌だけを掲載しています。
DOAJの審査は「編集委員会の顔ぶれや連絡先がきちんと明記されているか」「論文の査読方法や倫理方針が公開されているか」といった明確なチェックリストに基づいています。
しかし実際には、このような審査を人力だけで行うのは限界があり、世界中で増え続ける雑誌の動きに追いつくのは非常に困難です。
特に、巧妙に姿を変えて現れる新しい怪しい雑誌や、見かけだけは立派に作られたウェブサイトを持つ雑誌を見分けるのは至難の業です。
このような現状を受けて、今回の研究チームが注目したのが「AI(人工知能)」の活用です。
AIとは、人間のように“経験から学び、パターンを見つけて判断する”ことができるコンピューター技術のことです。
研究チームは、DOAJが採用しているチェックリストや、ウェブサイトの構造、論文の引用パターンなど多様な特徴をAIに覚えさせ、雑誌ごとの「あやしさ」の兆候を自動で分析できるシステムを目指しました。
ある意味でAIは雑誌の性格を学ぶことで「あやしさ」を見抜くのです。
さらに、今回のAIは「なぜ怪しいと判断したのか」を人間があとから説明できるように設計されているのが大きな特徴です。
たとえば「編集委員の名前や経歴が公開されていない」「同じ著者の論文ばかりが頻繁に引用されている」「雑誌のウェブサイトの作りが他と違って不自然」といった具体的な理由を、AIがピックアップして説明できるようになっています。
これによって、ただ単に結果だけが“ブラックボックス”のように出てくるAIではなく、人間の専門家が後からしっかり根拠をたどれる透明性の高い仕組みになりました。