そして、この研究で最も重要な発見は、こうした効果が一時的なものではなく、長く続いたということです。

患者さんたちの多くは、装置を埋め込んだ後も痛みが軽減し続け、最も長い人では3年半もその効果が続いているのです。

この結果は、慢性痛に苦しむ患者さんにとって、とても希望の持てる結果となりました。

慢性痛に朗報「あなた専用の治療法」が見える時代へ

慢性痛に朗報「あなた専用の治療法」が見える時代へ
慢性痛に朗報「あなた専用の治療法」が見える時代へ / Credit:Canva

長い間、痛みを専門とする医師や研究者は、なぜ慢性痛が治りにくいのかを考えてきました。

今回の研究は、そんな慢性痛の治療に対して、新たな可能性を示した重要な第一歩だと考えられます。

今回の研究の最大のポイントは、「個別最適化」と「必要に応じた自動制御」という二つのキーワードにあります。

これまで脳に電気刺激を与えて痛みを和らげる治療は、すべての患者さんに同じように、決まった場所に刺激を流し続けることが一般的でした。

これは例えるなら、誰にでも同じ内容の薬を渡して飲ませるような、一律な方法です。

しかし、この研究では、一人ひとり異なる脳の仕組みに丁寧に合わせて刺激する場所やタイミングを選び、その患者さんが痛みを感じた時にだけ刺激するという、いわば患者さんと「個別に対話する」ような治療を実現しました。

研究チームがこの「個別最適化」を重視した理由は、痛みの感じ方や、脳のどこを刺激すると痛みが軽くなるかが、人によって大きく異なることが分かったからです。

また、「必要に応じた自動制御」を取り入れたのは、常に刺激を与え続ける方法だと、脳が刺激に慣れてしまって次第に反応しにくくなる可能性があるからです。

これは例えば、同じ味の飴を食べ続けていると、だんだん味を感じにくくなる現象に似ています。

必要な時だけ刺激する方法なら、脳が刺激に対して新鮮な反応を保ちやすく、効果が長続きしやすいのではないかと期待されています。