さらに興味深いことに、核が反時計回り(左回り)に回転している細胞はまったく見られませんでした。

こうした一方向だけに回転する現象は、この細胞が明確に「右回りの利き手」を持っていることを意味しています。

では、どうして細胞が右回りに回ってしまうのでしょうか?

研究チームは、この謎を解くために、細胞の内部を支える「細胞骨格」という構造に注目しました。

コラム:細胞骨格って、どんなもの?

「骨格」と聞くと、私たちの体の中にある固い骨や、カルシウムでできた“骨”を思い浮かべるかもしれません。でも、細胞の中に“骨”のような固いものが入っているわけではありません。細胞骨格(英語では「cytoskeleton:サイトスケルトン」)とは、実はとても細くてしなやかな“糸”や“ネット”が、細胞の中を縦横無尽に張りめぐらされている状態のことです。この細胞骨格は、いわば「細胞の中の“秘密の骨組み”」。柔らかいゼリーのような細胞質の中で、細胞の形をしっかり保ったり、動かしたり、力を伝えたりする役目を果たしています。たとえるなら、テントの中に張ったロープや、風船の中に隠れているゴムの骨組みのようなもの。実際の細胞骨格は、太さが数ナノ~数十ナノメートルという超極細の“糸”でできていて、いくつかの種類があります。これらの細胞骨格は、必要に応じて組み立てたり分解したりできる“動く骨組み”であり、私たちの体の骨のように硬くて動かないものではありません。つまり、細胞骨格とは、「細胞の中で形づくりと運動を支える、しなやかで生きた“骨組み”」なのです。

細胞骨格は、私たちの体で言えば骨や筋肉のような役割を持ち、細胞の形を支えたり動きを作ったりしています。

主に細胞骨格を作っているのは「アクチン繊維」と「微小管」と呼ばれる2種類の糸状の構造です。

これらが細胞の中でどんな配置をしているのかを調べたところ、面白いことが分かりました。