つまり、民主主義の名の下に「自由の敵には自由を与えない」という発想が正当化されているのです。

実際にこの制度は何度か行使されています。

1952年にはネオナチの「社会主義帝国党(SRP)」が、1956年には東独共産党の影響を受けていた「ドイツ共産党(KPD)」が違憲とされ、解散に追い込まれました。

最近では2017年、ネオナチの「民族民主党(NPD)」の違憲審査が行われましたが、この時は「危険性はあるが国政レベルで影響力が乏しい」という理由で解散には至りませんでした。

こうした歴史を振り返ると、戦う民主主義という概念が単なる理論ではなく、実際に政治的現実を大きく左右してきたことがわかります。

そして今年の5月、憲法擁護庁はとある政党を「確実な極端主義団体」とし、盗聴や監視をすることができるようになりました。また8月、同党のヨアヒム・パウル候補が、ルートヴィヒスハーフェン市長選挙への立候補を禁止された事件もありました。

この「戦う民主主義」は本当に「自由」を守る盾なのでしょうか?

それとも、都合の悪い野党を締め出すための口実になっているだけなのでしょうか。

そもそも、その政党に何の問題があったのでしょうか?

これから掘り下げていきたいと思います。

2. ドイツのための選択肢(AfD)

ドイツ政界には様々な政党がありますが、ご存じのない方々のために事前に簡潔に説明したいと思います。

大きく分けて6つで、世間では概ね次のような思想を支持すると知られています。

■キリスト教民主同盟(CDU)+キリスト教社会同盟(CSU) キリスト教民主主義、リベラル保守主義を支持する。