ただこのような事情でも、光源は消えずに、家族を超えて近隣に届いていることは指摘しておきたい。町内会や小学校区などいわゆる狭い意味でのコミュニティがその光の届く範囲になる。

一人の高齢者にとって、家族と地域社会とは機能的には補い合う関係なのである。一人暮らしの人は一人ぼっちではなく、地域社会の中で支えられている。

ストリングスがストレングスの源

私は都市高齢者の生きがいを社会参加、友人交際、趣味娯楽、家族交流に大別してきたが、結局いえることはどれか一つの生きがい要因にこだわっていると、そこから二つ目の生きがい要因も見えてくることであった。「人は体験と人間関係に反応して、引き続き学び、変わり続ける」(Butler,1975=1991:469)のである。

個人がもつ複数のストリングスがライフスタイル全体のストレングスの源であることは、複数の都市高齢者調査で発見された命題である。

多世代間の共生の主役は高齢者

個人の生きがい追求と多世代間の共生をめざすことは、「少子化する高齢社会」が進行する21世紀における日本社会の目標の一つである。

岸田前内閣が出した『高齢社会対策大綱』でも、「年代を越えて、地域において共に生き、共に支え合う社会の構築に向けて、幅広い世代の参画の下で地域社会づくりを行える環境」(:5)の重要性が謳われている。

これまでの多くの「生きがい」研究から総合してみると、「一人称の生きがい」(専ら自分自身のために何かをする)、「二人称の生きがい」(家族・親族、友人等のために何かをする)、「三人称の生きがい」(他人と地域社会のために何かをする)があるとみなされる場合もあるし、学ぶ生きがい、遊ぶ生きがい、貢献する生きがいに三分割できることもある。

自分を生かす

「自分を生かす」こともまた生きるよろこびになり、同時に他人のためにもなるとみなす高齢者もいる。その延長線上に新しい経験や冒険を試みる高齢者が登場する。生活に少しだけ変化をつけるために、週3日の非正規雇用で働く高齢者も多い。就業しなくても、急激な変化は求めないが、パソコンにも取り組みたい、英会話を学びたい、ボランティア活動を行いたいというライフスタイルを模索する高齢者も少なくない。