たとえばプレーリーハタネズミなどの種では、オスがメスを独占する能力の高さが、オス親としての能力や巣の防衛能力の高さを予測する因子として機能しています。

つまり絆を結ぶ前に、優秀な相手を選ぶ本能レベルの「打算」が働いているのです。

続く絆の形成も、やはり本能的行動であり、脳内にそれを可能とする仕組みが事前に組み込まれていると考えられます。

(※あらゆる動物は本能に従う行動を行うと報酬系から快楽という「ご褒美」を貰えます。これまでの研究でも、絆を結ぼうとする行いは、報酬系を起動させることが知られています)

そこで今回、テキサス大学の研究者たちは、絆形成の前後でプレーリーハタネズミの脳がどのように変化するかを、調査することにしました。

幸いなことに、一夫一妻制をとるプレーリードックの場合には、「発情➔交尾➔絆の形成➔安定的な関係」という、極めて人間に近しい形がとられています。

ただ絆形成の根底にどんな脳回路が存在し、何が脳回路を活性化させるかは、まだ不明な部分が多くなっています。

一夫一妻制の動物たちで結ばれる絆とは、何がキッカケとなるのでしょうか?

オーガズムには絆を作る力がある

何がキッカケで絆が結ばれるのか?

この謎を調べるため研究者たちは、プレーリーハタネズミたちの脳全体のニューロン活動を3Dマッピングする技術を使用しました。

(※具体的には最初期遺伝子(IEG)と呼ばれる、刺激に対して即応的に活性化する遺伝子群の回路の脳全体のネットワークが調査されました)

技術進歩により神経ネットワークそのもののを詳しく調べられるようになりました。
技術進歩により神経ネットワークそのもののを詳しく調べられるようになりました。 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

古典的な研究では、絆の形成にはオキシトシンのような愛情に関する物質や、報酬系回路でのドーパミン分泌などが重要な役割を果たしていることが判明しています。

一方で近年の脳科学研究では、伝達物質よりも神経ネットワークを解析する手法が用いられるようになってきました。