つまり意思決定では選んだほうの活性化と選ばなかったほうの抑制化がセットで起きていたわけです。
研究者たちは「二者択一の状況において、この基本ルールは直感的に理にかなっており、優柔不断を許さないシンプルかつ強力な仕組みとなる」と述べています。
選ばないほうを抑制することには、意思決定の安定化させ、決定の変化を防ぐのに役立っていると考えられるからです。
というのも間違いを犯すことよりも、決定を下せないことは、しばしばより大きな不利益になります。
決定さえ下せれば、少なくとも間違ったほうを特定し、正解のほうを選びなおすことができます。
また下した決定を維持できなければ、何度も分岐点に戻って来てしまい、こちらも結局正解に辿り着くことはできません。
決断を下すシステムと決断を維持するシステムの2つはセットとなり「意思決定」を実現していたとも言えるでしょう。
プログラムや機械工学の知識がある人たちならば、仕組み自体は「ありふれたもの」と思えるでしょう。
先にも述べたように、理論研究においても、似たような仕組みが繰り返し提案されてきました。
しかし実際の観測から、意思決定の仕組みが実証されたのは、今回の研究がはじめてとなります。
研究者たちは、同様の意思決定の仕組みは人間の脳にも存在する可能性が高いと述べています。
また意思決定の仕組みが実証されたことで、具体的な薬の開発もようやく始められます。
これまでの研究では、アルツハイマー病、統合失調症、依存症などの患者たちでは、正しい選択を行うことに苦労することが知られています。
(※たとえばアルコール依存症の場合、お酒を飲まないという選択をしたり、飲まないという選択を維持することも困難です。)
意思決定の仕組みを解明することができれば、決断を下すことや決断を維持することを助けてくれる薬が開発できる可能性も出てくるでしょう。
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参考文献