(※ただこの作業は極めて地道であり、自動化された観測システムを導入したにもかかわらず、全てのニューロンと全てのシナプスを特定するには何カ月もかかりました)
次に研究者たちは、この3次元構造に意思決定を行っていたときのニューロンのリアルタイムの活動記録を組み合わせ、意思決定時に起こるネットワークの活動パターンを1ニューロンレベル、1シナプスレベルでの「見える化」を実現しました。
そうすることで得られたのが、上の動画になります。
動画の左側はT字路を進む様子をマウス視点で示しており、右側はそのときのマウスの神経ネットワーク活動を示しています。
結果、驚きの事実が判明します。
はじめて実証された意思決定のシンプルかつ強力なルール

まず最初に明らかになったのは、ネットワーク内部には「他のニューロンを興奮させる興奮性ニューロン」と「他のニューロンを抑制する抑制性ニューロン」があるという点でした。
そしてマウスが右折を決めた時には、そのなかの一部の興奮性ニューロン(右折ニューロン)が発火し、同時に左折を決めた時に興奮するはずだった左折ニューロンを抑制する抑制性ニューロンを起動させました。
逆に左折を決めた時には、左折ニューロンが興奮すると同時に右折ニューロンを抑制する抑制性ニューロンが起動していました。
この結果は、意思決定を行う神経ネットワークには、それぞれの選択に対応して興奮するニューロンたち(右折ニューロンと左折ニューロン)が存在すること、また同時に、それらのニューロンたちは、選ばれなかったほうのニューロンの動きを抑制していたのです。