さらに、年齢や職業もさまざまで、定年退職者やエンジニア、セラピスト、教員、アーティスト、金融関係者など、多様な人々が関わっていることがわかりました。

研究チームは単なる意見交換にとどまらず、集会やデモ、抗議活動へと発展していく現場も観察しています。

たとえば、会場では「自分の家族が医療事故で苦しんだ」「5Gの電波で体調を崩した」などの体験談が語られ、同じ不安や疑問を持つ人たちが拍手や共感を通じて一体感を強めていきます。

このような人と人との共鳴が起こる現場を追うことで、研究チームは「普通の人」がなぜ突然陰謀論に引き込まれるのか、その新しいカギを明らかにしようとしています。

特に注目すべきは、こうした共鳴によって生まれる強い納得感や安心感が、理性的な判断や論理的な違和感をかき消してしまうというメカニズムです。

「共鳴」が生み出す“目覚め”の3段階

研究チームは、なぜ「普通の人」までもが陰謀論に巻き込まれるのか、そのカギを「三段階の共鳴モデル」として明らかにしました。

このモデルは、陰謀論が個人の心の中だけで完結するのではなく、仲間とのつながりや共感が連鎖することで、大きな社会運動へと広がる流れを説明しています。

最初の段階は「感情的共鳴」です。

たとえば、ワクチン接種後に家族の体調が急変したり、公的機関の対応に不信感を覚えたりすると、「なぜこんなことが起きるのか」「何かおかしい」という強い感情が生まれます。

こうした思いは、最初はただの不安や疑問かもしれませんが、SNSや身近な人々との会話を通じて「自分と同じ体験をした人がいる」と気づくことで、一気に広がります。

続いて起こるのが「認識的共鳴」です。

SNSやコミュニティ、デモ集会などで、同じ疑問や不安を持つ仲間と出会い、「やはり本当のことは隠されているのでは」と確信を深めていきます。

たとえば、研究チームのインタビューでは「反ワクチングループで自分と同じ思いの仲間に出会い、安心できた」と語る人もいました。

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