星として晩年の状態にあるとされる、オリオン座「ベテルギウス」は、たびたび天文ニュースの話題にのぼっており、現在非常に膨張した状態になっていると予測されています。

その直径は10億キロメートル以上に達していると考えられ、その全体のサイズは太陽の約1000倍に匹敵します。

そんなベテルギウスの表面は、現在飛んでもないことになっている可能性があるようです。

その事実はベテルギウスの自転速度の調査から示されました。

調査によると、ベテルギウスは秒速5キロメートルという超高速で自転しているように見えると報告されたのです。

しかし専門家いわく、ベテルギウスほどの巨大な恒星であれば、理論的にはこの秒速5kmという数値より2桁は遅いはずだといいます。

では、どうしてこんな超高速に見えたのでしょうか?

独マックス・プランク天体物理学研究所(MPI for Astrophysics)の調査では、ベテルギウスの表面が「ボコボコと沸騰している」せいで、自転速度が正確に測定できなかった可能性があるという。

研究の詳細は2024年2月16日付で科学雑誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されています。

目次

  • 恒星の自転速度はどうやって知るのか?
  • ベテルギウスが「沸騰」しているせいで高速に見えていた?

恒星の自転速度はどうやって知るのか?

2017年にアルマ望遠鏡(南米チリ)で観測されたベテルギウス
2017年にアルマ望遠鏡(南米チリ)で観測されたベテルギウス / Credit: ja.wikipedia

何百光年も離れた恒星の自転速度というのは、車の走行スピードやピッチャーの球速を測るようには調べられません。

そこで天文学者たちは、自転する天体の左右のから届く光の波長の違いに着目し、自転速度を割り出しています。

回転している物体を正面から捉えた場合、こちらに向けて近づいている部分と、離れていく部分ができます。

左回転で自転する物体を正面から見た場合、左側は自分に近づいているが、右側は自分から離れていく状態になる
左回転で自転する物体を正面から見た場合、左側は自分に近づいているが、右側は自分から離れていく状態になる / Credit:Wikimedia Commons