また「衝動的な不適合性」の高さは、反社会的な行動や自制心の低さにつながります。しかし、同時にこの特性は世の中の流行や常識に反旗を翻すアイデアを打ち出す上で有効な指標ともされます。
それゆえ、作詞をするミュージシャンやブラックユーモアを織り交ぜるコメディアンでは、このスコアが高くなる傾向があります。
しかしながらマジシャンは、他のグループに比べて思考力や集中力が高く、心理面でも健康であるなど、ほぼすべての項目で精神疾患に罹りにくい特性を示していました。
一体なぜマジシャンはこれほど心理面で安定しているのでしょうか?
なぜマジシャンは精神疾患に罹りにくいのか

研究主任のギル・グリーングロス(Gil Greengross)氏は、マジシャンが精神疾患になりにくい明確な理由はまだ述べられないとした上で、自身の見解を説明しています。
「マジシャンが他の多くのクリエイターや表現者と異なる点は、パフォーマンスに必要な精度の高さです。
マジックは他のパフォーマンスと異なりミスが許容されないため、基本的に”オール・オア・ナッシング(全てか無か)”の表現となります」
確かに、コメディアンやミュージシャンはたとえセリフや歌詞を間違えても、それに続くパフォーマンスで十分に取り返せるでしょう。
しかしマジシャンの場合、ミスをしてタネがバレてしまうと、後の結果が180度変わってしまいます。
こうしたミスの許されないパフォーマンスが、彼らに自制心や集中力の高さ、衝動性の低さをもたらし、ひいては精神疾患のリスク低下につながっているとグリーングロス氏は考えます。
では、マジシャン本人はこの研究結果についてどのように考えているでしょうか?
マジックで「社会的スキル」がアップする
本研究に参加したニューヨーク在住のマジシャンであるサラ・クラッソン(Sara Crasson)氏は、このように話します。