研究では、イギリス・アメリカのマジック協会に所属しているプロのマジシャン195名(男性164名・女性30名・その他1名)一般人233名(男性183名・女性37名・その他3名)を集め、メンタルヘルスや心理・認知的特徴を比較。

さらに同様の調査がなされている他のクリエイティブな表現者のグループとデータ比較しました。

このグループには主に、俳優・コメディアン・ミュージシャン・詩人・芸術家(絵画や彫刻などの視覚芸術)が含まれています。

調査項目としては、統合失調症・自閉症・分裂病の特性、それから思考力・集中力・創造力の高さ、幻覚や幻聴・社会不安・衝動性・反社会性・自制心の高低などが幅広く測定されました。

そしてデータ分析の結果、マジシャンは全体として精神疾患にかかるリスクが一般人やクリエイティブな表現者に比べて、有意に低いことが確認されたのです。

こちらのグラフは、精神疾患の4つの兆候の程度を示したもので、いずれも統合失調症やうつ病の初期症状と関連します。

・unusual experiences:異常な体験(幻聴や幻視のような、現実と異なる感覚体験)

・cognitive disorganization:認知的な混乱(思考の構成や連続性の乱れ)

・introvertive anhedonia:内向的な無快感症(想像や思考から喜びを感じられない、感情の鈍化)

・impulsive nonconformity:衝動的な不適合性(反社会的行動の傾向)

これを見ると、マジシャンはどの項目においても他のグループに比べて、スコアが低いことが分かります。

精神疾患の4つの兆候のスコア(マジシャンはどの項目でも低い)
精神疾患の4つの兆候のスコア(マジシャンはどの項目でも低い) / Credit: Gil Greengross et al., BJPsych Open(2023)

例えば、「異常な体験」のスコアが高いと、思考力や集中力を低下させるような幻覚や幻聴などを経験する可能性が高くなることが知られています。