最初にマウスをガラス玉ケージに入れて、不安感を示すシータ波の増強を確認したところで、光刺激を与えてアルカリ化させます。
その結果、手綱核のシータ波が減弱するとともに、マウスはガラス玉で満たされた明るい部屋にも平気で居座るようになったのです。

以上の結果から、不安を誘発する環境にあっても人為的な操作を加えれば、不安感を抑制できることが実証されました。
本研究の成果は不安障害の新たな治療戦略を確立する上で、重要なマイルストーンとなることが期待されます。
作家の芥川龍之介は死後見つかった手記の中で自殺理由について、次のような文章を残しています。
誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。君は新聞の三面記事などに生活難とか、病苦とか、或は又精神的苦痛とか、いろいろの自殺の動機を発見するであらう。しかし僕の経験によれば、それは動機の全部ではない。のみならず大抵は動機に至る道程を示してゐるだけである。それは我々の行為するやうに複雑な動機を含んでゐる。が、少くとも僕の場合は唯ぼんやりした不安である。何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安である。
或旧友へ送る手記 芥川龍之介
今回の研究は、漠然とした不安を抱きやすい現代社会において、不安とうまく付き合っていく画期的な方法を見つけるきっかけになるかもしれません。
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参考文献
説明のつかない不安感の正体 手綱核アストロサイトによる神経活動制御の解明
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/02/press20240214-02-astrocyte.html
元論文
Anxiety control by astrocytes in the lateral habenula
https://doi.org/10.1016/j.neures.2024.01.006