チームは、不安感をコントロールしているのは「手綱核(たづなかく)」という脳領域ではないかと考えました。
手綱核は、海馬の下側に位置する一対の小さな神経核で、ほぼすべての脊椎動物に見られる古い脳構造です。
意欲や認知機能において重要な役割を担っており、手綱核が異常を起こすと、うつ病や不安障害につながると考えられています。
また今回の研究では、手綱核の中の「アストロサイト」という脳細胞に焦点を当てました。
脳は一般にニューロン(神経細胞)とグリア細胞という2つの細胞によって構成されており、そのグリア細胞の一種をアストロサイトといいます。
アストロサイトは脳内の情報処理や神経伝達物質の濃度調節に関与しているため、チームは不安感の制御にも関わっているのではないかと予想。
マウスを実験台として、手綱核のアストロサイトが不安感を左右するかどうかを検証しました。
不安感を引き起こす脳領域を特定!
これまでの研究で、マウスは「ガラス玉」を前にすると不安感が生じることが知られています。
マウスにとってガラス玉は天敵のような直接の脅威ではないのですが、なんとなく居心地が悪く不安にさせるようです。
そこで今回の実験では、床一面にガラス玉を敷き詰めたケースを用意し、マウスにとって言い知れぬ不安誘発環境を作りました。

この状態でマウスの脳内の神経活動を記録したところ、手綱核のアストロサイトにおいてシータ波(5〜10Hz)の活動が増強することが示されたのです。
これは通常の飼育ケースにいるときには見られない活動です。
では、手綱核をシータ波で刺激すれば、ガラス玉がなくても不安感を誘発できるのでしょうか?
これを検証すべく、チームは「2方明暗箱装置」を用意しました。