特によく知られているのは「DNA(デオキシリボ核酸)」です。

DNAは生物の設計図を長期間保存する役割を持ちます。

でも、DNAはそのままではタンパク質を作る指示を出すことができません。

細胞がタンパク質を作るときには、DNAの情報を「RNA(リボ核酸)」という別の核酸分子にまずコピーします。

このRNAが持つ情報をもとに、材料となるアミノ酸が一つずつ組み込まれていき、実際のタンパク質合成が行われます。

ここで、「アミノ酸がどうやって運ばれるの?」という疑問が生まれるかもしれません。

アミノ酸は工場の部品のようなもので、それを運ぶトラックが「tRNA(転移RNA)」です。

この小さなRNAは、アミノ酸をしっかり運んで、組み立て場である「リボソーム」(タンパク質を組み立てる場所)に届けます。

ところが、この「tRNA」にアミノ酸を積み込む作業は、実はとても大変です。

この積み込みには「アミノアシルtRNA合成酵素」という特別な種類の酵素(生き物が持つ触媒役のタンパク質)が必要です。

でも、この酵素自体もタンパク質でできています。

つまり「タンパク質を作るためにはまず酵素が必要だが、その酵素はタンパク質でできている」という、ぐるぐると回る“堂々巡り”の問題が生じます。

これはよく言われる「鶏が先か卵が先か」というジレンマにそっくりです。

つまり、「最初の生命がどのようにして始まったのか?」という問いは、とても難しいものなのです。

この難題に対して、科学者たちは「生命の初期にタンパク質合成はどうやって始まったのか?」という疑問をもとに、いくつもの仮説を考えました。

その代表例が「RNAワールド仮説」と「チオエステルワールド仮説」です。

RNAワールド仮説は、DNAやタンパク質よりも前にRNAが主役だったと考える説です。

RNAは情報を持ちながら、簡単な化学反応を進める“便利な分子”でもあるからです。