ロンドンの大スモッグ(1952年)
1952年の冬、ロンドンは史上最悪の大気汚染に見舞われた。高気圧によって工場や家庭から排出された煙が地上に閉じ込められ、緑がかった黄色の濃密な霧、通称「豆のスープ(pea-soup)」が街を覆ったのだ。
12月5日から9日までの4日間、太陽の光は完全に遮断され、ハリケーン・ランプの光さえも通さない暗闇がロンドンを支配した。「まるで盲目になったようだった」と、ある葬儀屋の助手は後に語っている。この大スモッグによる死者は、当初4000人と報告されたが、近年の研究では心臓や呼吸器系の疾患により、約1万2000人が死亡したと推定されている。この悲劇は、英国における大気浄化法の制定を促した。

ヤクーチアのブラックアウト(2018年)
夏の間、太陽が20時間も沈まないシベリアのヤクーチア共和国(サハ共和国)で、2018年7月20日、不可解な現象が起きた。午前11時から午後2時までの約3時間、太陽が完全に姿を消したのだ。不吉な暗闇と共に、空気中にはザラザラとした黒い塵が漂っていたという。
この原因は全く分かっていない。ある住民は「悪魔の仕業だ」と怯え、森林火災の煙だという説も出たが、気象当局者は「もし火事のスモッグなら、煙と焦げた匂いがするはずだ。我々の観測所ではそのようなものは記録されていない」と、その説を否定している。

森林火災の煙、火山の灰、そして産業が生んだ黒い霧――。科学の進歩は、歴史上の多くの「暗黒の日」に光を当ててきた。しかし、今なおそのベールを剥がすことのできない、原因不明の闇も確かに存在する。シベリアを包んだ静寂の暗黒、バグダッドに降った赤い砂。これらの出来事は、私たちが生きるこの世界が、まだ完全には理解できない、大いなる謎に満ちていることを静かに物語っている。次に空がその色を失うとき、私たちはその理由を知ることができるのだろうか。
参考:Mental Floss、ほか
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