人口の減少を、世界中で問題が表面化している外国人に頼るのではなく、AIの活用で補うべきであるとすれば、この先も電力消費量は確実に増大する。その電力を、縷説した通り有事に脆弱なLNGや、ましてや自然を緩慢に破壊し、中国を利するだけの再エネに頼るなど、以ての外である。

東日本大震災ですら、福島や女川の原発の主要部分はほぼ無傷だった。福島第一の事故原因は専ら津波による地下電源の喪失だったが、事故を奇貨として、今や安全対策が全て施されており、残るはその後に生じたテロ対策だけだ。が、それらは運転を再開して、発電しながら漸次進めれば良い類の事項が多い。

「報告書」も、中国による台湾の原発への攻撃に詳しくは触れていない。その理由は、ジュネーブ条約第一追加議定書第56条で、ダム、堤防、原発などの「危険な力を内蔵する工作物及び施設」を攻撃してはならないと規定しているからだ。国際社会は原発への攻撃を、核兵器の使用と同義と見做しているのである。

ところで、台湾の電力を司る「台湾電力公司」の曾文生会長は、筆者が高雄に在勤していた11年末から14年3月末当時、陳菊高雄市長の経済発展局長だった。外国企業対応は同局の主要業務だったから、曾局長は高雄日本人会会長だった筆者を「日本人慰霊塔」を残す活動の一環で、陳菊市長に引き合わせるなど、多大なご支援を頂いた。

その曾局長に筆者はある会食の席で、「台湾はなぜ脱原発なのか」と単刀直入に問うたことがある。曾局長は「台湾も地震国です。東日本のようなことがあれば小さな台湾は滅亡してしまう」と仰った。まだ「東日本」から1年余りしか経っていない時のことで、確かに台湾でも地震は頻発している。

日本は、先の大戦に敗れて台湾を放棄し、600百万の台湾人(今の本省人)を「GHQ一般命令第一号」の解釈を捻じ曲げた蒋介石国民党の恣にさせた。東日本大震災でも初動を誤って水素爆発を誘発させ、台湾を脱原発に追い込んだ。筆者は日本人として台湾と台湾人に対し、これらの責任を痛感する。