しかもLNGの物流は封鎖に対して最も脆弱である。紅海でのフーシ派によるタンカー攻撃は海事コミュニティを大混乱に陥らせた。LNGタンカーの所有者は、ドローンやロケットランチャーの攻撃を回避すべく、即座に喜望峰周りの航路を切り替えたことがそのことの証左である。

つまり、封鎖が行われればLNGは電力源として急速におそらく数週間で失われ、石炭の集積所や石油貯蔵タンクも遠からず空になる。最悪のシミュレーションでは、封鎖中に新たな供給がなければ、発電機は停止し、経済は崩壊し、住民は文字通り「Lights Out」の状態に陥ることになる。

封鎖が続く中、米国と台湾は日本の港から台湾への封鎖を突破するための護送船団を編成するだろう。だが、中国ミサイルの性能向上により、護送船団の損耗率は漸次50%に近づく。LNGタンカーは購入できるかもしれないが、50%の確率で沈む危険を冒して、船員が船に乗ろうとするだろうか?

その点、原発の核燃料はラックに1年半分の貯蔵が可能であり、補給も大型軍用輸送機1機の1回の飛行で1年半分の燃料を輸送が可能である。残念なのは85年当時、電力の50%以上を原発に拠っていた台湾が、25年5月に最後の原発を停止してしまったことだ。

だのに台湾が米国の軍事支援をあてにするのは皮肉だ。台湾は封鎖の対抗に最も有効な原発を閉鎖するという自滅行動をとる一方で、原子力空母や原潜の米兵が台湾を守ってくれると考えているようだ。米国政府は台湾に対し、米国の軍事的保護の代償として、台湾は原発の再開と拡張を迫るべきである。

まとめ

原子力エンジニアの執筆者らしい記事の結びではある。が、まさに的を射た主張と思われ、それはそのまま「核の傘」でも米国頼みの我が国にも当て嵌まる。日本の幾つかの原発も、いつまでも再稼働できずにいる。そしてこうしている間にも森林や原野が風力発電や中国製太陽光パネルで埋め尽くされ、自然が破壊されつつある。