ワタナベ君:メガバンク、地方銀行の多くも株価は新高値ですよ。でも政策金利が0.5%程度上がっただけで、これはできすぎだと思うのですが。いかがでしょうか?
教授:手始めとして信用金庫の最近の状況を共同研究者に調べてもらった。全国となると手に余るので北海道(20信用金庫)だけを対象にした。
公開された数字から検討してみると、“全天晴れ”ではないことがわかった。それどころか栃木県に見られた暗雲が私達の身近にもありそうなんだ。“楽観視”の最大の根拠は“預金増”なんだがね。
ワタナベ君:それは日経新聞の北海道版で報道されていました。研究者には預金をあまり重視しない人もいますが、教授は徹底した預金重視派ですね。
教授:信用創造論を信奉る人達は“貸付が預金を形成する”と考えるから、どうしても預金軽視になる。確かに預金を集めない金融機関もあるから、そう考えるのもわかるけど。預金は金融業のベースですよ。お金が誰かの手元で余る。そのままにしておかないでそれを使う人に移す。その移動の第一の手続きが預金収集だから、それは金融業の土台なんだ。でも、この話は長くなるから止めて、北海道の信用金庫に話を戻そう。
ワタナベ君:三大都市圏に本店を有する信用金庫は預金を9%も伸ばした。これに対して北海道内は1.4%の微増でした。マイナスになったところも7金庫あった。この違いはなんでしょう?
教授:北海道だけでなく東京から遠い地方は同じようなもの。理由のひとつは人口減。預金保有者が他界し相続になると、相続人の多くは大都会にいるからお金は地方に残らない。
もうひとつはネット銀行の普及と拡大だ。高齢者は私も含めていまだに預金通帳とハンコだけど、若くなる程スマホとネット銀行だ。この傾向は近年すさまじく、メガバンクも影響を受けている(図1)。地方には若い人は少ないけど、この影響は大きい。

図1 銀行預金の動き 出典:日本経済新聞(2025年7月9日)