私たちがミスをしたとき、実は脳の中では瞬間的に「ミスをしたぞ!」という警告サインが出ます。
これを専門用語で「エラー関連陰性電位(ERN)」といいます。
ERNはミスをした直後、ほんの一瞬で脳から出る小さな電気信号です。
もし悪態をつくことで本当に「心のブレーキ」が弱まるならば、このミスを知らせる脳の警告サインも弱まるはずです。
つまり、悪態をついた時には、「多少のミスは気にせずに行動に集中する」ような状態になり、ERNの大きさが小さくなるだろうと予想されました。
今回の研究では、この予想が正しいかどうかを確かめること、そして「悪態で握力が高まる」効果をもう一度確かめることを目的として行われました。
もしERNが小さくなることが確認できれば、「悪態をつくと脳が自分への監視を弱め、その結果、力を出しやすくなる」というメカニズムの説明につながると考えられたのです。
悪態がもたらした握力アップの秘密

今回の研究では、大学生を中心にした52人の参加者に協力してもらい、「悪態(汚い言葉)を口にした場合」と「普通の言葉を口にした場合」で、心や体にどのような違いが現れるかを調べました。
悪態というのは、例えば「くそっ!」や「ちくしょう!」のように、イライラしたり興奮したりした時に思わず出てしまう言葉です。
普通の言葉とは、日常的で何の感情も伴わない言葉(たとえば「木」や「フラット」など)を意味します。
参加者には、まず自分で好きな悪態と普通の言葉をひとつずつ選んでもらい、それをそれぞれ別のタイミングで10秒間繰り返し口に出してもらいました。
その後、それぞれの言葉を言った後に、人の気分や力の出しやすさがどのように変わるかを詳しく調べました。
今回は主に、「握力の変化」、「気持ちや感情の変化」、「脳がミスをチェックする機能の変化」の3つに注目しています。