しかし実際に測定してみると、悪態をついた場合も普通の言葉をついた場合も、脳がミスをチェックするERNの大きさにはほとんど違いが見られませんでした。

つまり、脳は悪態をついても「ミスに敏感に反応する」という機能をそのまま保っており、悪態によって心のブレーキが完全にゆるんでしまうことはなかったのです。

さらに詳しい分析では、この脳のERNの変化(あるいは変化のなさ)が握力アップ効果に直接影響しているわけではないことも確かめられました。

研究チームは当初、「悪態による力の増加はミスを気にしなくなるために起こるかもしれない」と考えていましたが、今回の結果から、その説明は難しいことがわかりました。

つまり、悪態によって握力が高まる現象は、「脳がミスに対して鈍感になる」という仕組みとは異なる、別の原因によるものだと考えられるのです。

悪態も使いようで助けになる

悪態も使いようで助けになる
悪態も使いようで助けになる / Credit:Canva

今回の研究から得られた重要な発見のひとつは、「悪態をつくと力が出る」という現象が偶然や気のせいではなく、科学的に確かなものであることを改めて証明できた点です。

これまでも同じような実験は行われていましたが、今回の研究でも結果が再現され、悪態によって握力が約1.4kgほど高まることが再確認されました。

科学の世界では、一度の実験結果だけではまだ確かなこととは言えず、別の研究者が同じ実験をして同じ結果を出すこと(追試)がとても重要です。

今回の研究がその追試に成功したことで、「悪態が身体能力を一時的に高める効果がある」という考え方がさらに強く支持されることになりました。

もう一つの新たな発見として、悪態をついた時に参加者の感情や意欲がはっきりと高まることが示された点があります。

研究で使われた「BASドライブ(行動を起こそうとする心の推進力)」という指標は、「何かに積極的に取り組みたい」「目標に向かって頑張りたい」という気持ちの強さを示しています。