悪態をついたときに私たちの体は強い感情を抱きやすくなり、その感情の影響で体の内部の活動(自律神経の反応)が活発になるとされているのです。

自律神経とは、私たちが意識しなくても勝手に体の機能を調整してくれる神経のことで、例えば緊張すると心拍が速くなったり、汗をかいたりするのはこの自律神経の働きです。

悪態をつくことが、この自律神経を刺激し、体が一時的に「本気モード」に入るような状態になるのではないかと考えられています。

しかし、実際にはまだよく分かっていないこともありました。

特に、「なぜ悪態をつくことで一時的に力が出るのか」という詳しい仕組みは、長い間はっきりと説明されていなかったのです。

かつての研究者たちは、「悪態をつくとアドレナリン(興奮したときに出るホルモン)が増えて力が出るのではないか?」と予想し、その証拠をつかもうとしていました。

しかし、この予想はなかなかはっきりとは実証できませんでした。

そこで最近になって注目されているのが、「状態脱抑制(じょうたいだつよくせい)」という考え方です。

これは難しい言葉ですが、簡単に言えば「普段は心にかかっているブレーキが一時的に外れて、行動を起こすアクセルが強く踏まれるような状態」のことを意味します。

私たちは普段、脳の中で常に「これをやってもいいかな?」「失敗したらどうしよう?」という自分自身への見張り(自己チェック)をしているため、なかなか力いっぱい行動をすることが難しくなります。

しかし、悪態を口にすると、一瞬だけこの見張り役の力が弱まり、「失敗を気にせず思い切りやってみよう!」という気持ちに切り替わりやすくなるのかもしれません。

イメージとしては、「普段は安全装置がついている機械が、短時間だけ安全装置を解除してフルパワーを出す状態」に似ています。

研究チームは、この「状態脱抑制」の理論が本当に正しいかを確かめるために、脳が行っている自己チェック機能に注目しました。