つまり、中房温泉の珪華をよく調べて仕組みを知ることで、過去の地球に存在した多様な生き物やその当時の環境についてより深く知ることが可能になるのです。
実際、これまで古生代や中生代など大昔の地層からも珪華の化石が見つかっていますが、これらの化石が保存している生き物の種類や数はあまり多くないと考えられてきました。
しかし今回の研究成果によって、実はこれらの化石にも、まだ発見されていない多くの生物が記録されている可能性があることがわかってきました。
つまり、古い珪華化石を改めて詳しく調べ直すことで、これまで見過ごされてきた多彩な生物の痕跡が見つかるかもしれないのです。
さらに今回の発見は、私たちの身近な自然環境への見方を大きく変える可能性があります。
日本には各地に温泉がありますが、その多くは森や山のなかにひっそりと湧き出しています。
これらの温泉地は、観光地やリラックスする場所として親しまれていますが、その足元には、将来の研究者たちが過去を調べるための重要な手がかりがひっそりと隠されているかもしれません。
普段は気づかなくても、私たちが何気なく訪れている温泉地には、未来に向けての「自然からのメッセージ」が刻み込まれている可能性があるのです。
「湯けむりの陰に化石あり」――そんなロマンと発見の可能性を私たちに示した、極めて重要でワクワクするような研究成果だと言えるでしょう。
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元論文
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
https://doi.org/10.1016/j.palaeo.2025.113176
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。