収益分配に関してIFRがバックストップ権限を持ち、下部クラブの財務基盤や持続可能性が焦点になっていることから、今後は下部リーグへ収益が手厚く分配されることが予想される。プレミアリーグ運営側や多くのプレミアクラブからは、懸念が示されている。

もし日本にIFRがあったならば…
例えば英国では、1889年創設のクラブを起源とするウィンブルドンFCが財政難を理由にサポーターのボイコットを押し切って本拠地を移転し、2004年にミルトン・キーンズ・ドンズFCとなった。そして現在は、反対するサポーターが2002年に立ち上げたAFCウィンブルドンと同じ、EFLリーグ2に所属している。
移転後に大きな成功を収めたわけでもなく、伝統的なクラブを移転させる必要が果たしてあったのか疑問も残る。しかし、これはクラブ(経営主体)とサポーター(顧客)という民間の経済メカニズムで決められたことで、それもサッカーの歴史の1ページだ。今後このような紛争が発生した場合は、IFRが介入することになる。
もし日本にIFRがあったならば、ジェフユナイテッド市原・千葉の本拠地移転もなかったかもしれない。過去にはヴィッセル神戸がチームカラーを変更する際に一部のサポーターが反対したが、エンブレムに旧カラーを残すことで収束した。この議論にもIFRが介入していた可能性がある。
また、Jリーグでは初の外資買収事例として、大宮アルディージャが2024年にレッドブル社に買収され、チーム名を「RB大宮アルディージャ」と改称、エンブレムも刷新された。日本国内では大きな混乱は生じなかったが、IFRのような監督機関があれば、クラブの財務・地域責任・オーナー適格性など多角的に精査される対象となっただろう。
英国では、クラブオーナーの身辺調査も厳格化される。IFRは暴君のように振る舞うオーナーを退場させることができる強い権限を持つ。プレミアリーグの成功の一因は、世界中の資本家の巨額資金を呼び込んだことだ。しかし経営者は、自由な経済活動を好む。世界で最も規制が多い国のクラブに投資したいとは思わない可能性がある。