業績不振の民間企業は倒産するのが常だ。近年の英国サッカー界では、1885年創設のバリーFCが財政難により2019年にEFL除名を余儀なくされた。しかし、サッカークラブは地域の文化財的な位置づけにあり「市場経済の原理」と簡単には片付けられない市民の感情がある。
その直後には、新型コロナウイルスのパンデミックで多くのクラブが経営危機に陥った。さらに、2021年には欧州スーパーリーグ構想が正式発表され、サポーターや選手に一切の相談なく上層部だけで進められたことが大きな反発を招いた。こうした一連の問題を踏まえ、クラブ経営の透明性と地域への責任を明確にする法律が制定されたのだ。

サッカーの新たな動きには総じて拒絶反応を示す国民性
つまり、サッカー激動の時代を迎えて、鬱積したサポーターの不満を議会が新法としてすくい上げたかたちと言える。競技の統括団体を「フットボール・ガバニング・ボディ」というが、本当にガバメント(政府)が、統括することになったといっても過言ではない。
フットボール・ガバナンス法の公式資料では、欧州スーパーリーグ構想を「有害な分離リーグ」と断定している。米国メジャーリーグサッカー(MLS)にも昇降格はないが、出入りを限定するシステムが英国では特に不評だった。
サッカー母国のイングランドサッカー協会は、国際サッカー連盟(FIFA)の1904年の創設メンバーではなく、1930年の第1回ワールドカップにも参加していない。伝統を重んじるあまりに、サッカーの新たな動きには総じて拒絶反応を示す国民性がある。
暗黒の時代にフットボールリーグを離脱した上位クラブが1992年に創設したのが、プレミアリーグだ。もし当時IFRが存在したならば構想は潰され、現在の成功はなしえず冬の時代が続いていた可能性もあるだろう。