つまり、強い感情が動くときは、大まかな全体像(全体記憶)はしっかりと記憶に残る一方で、細かな部分(細部記憶)は忘れやすくなってしまうという特徴があります。
言い換えると、「細かなことよりも、ざっくりと覚える」ように脳が働くのです。
では、音楽の場合はどうでしょうか?
音楽には感情を動かす力がありますが、その感じ方は人それぞれです。
同じ音楽を聴いても、「とてもワクワクする」という人もいれば、「落ち着いた気持ちになる」という人もいるでしょう。
そこで今回の研究チームは、「記憶を覚えた直後に音楽を流したら、どんな影響があるのか?」という疑問を、詳しく調べることにしました。
特に重要なのが「記憶した直後」のタイミングです。
私たちの脳は、何か新しい情報を覚えた後、その記憶を整理してしっかりと定着させようとします。
そこでこのタイミングで音楽という刺激を与えれば、記憶の固定のされ方を変えられるかもしれない──これが研究の狙いでした。
ほどよい音楽の興奮が細部記憶を強化する

今回の研究チームが明らかにしようとしたのは、音楽が「実際にどのように記憶に影響を与えるか」ということです。
しかし、記憶といっても、実はいろんな種類があります。
たとえば、「昨日の晩ごはんは何を食べたか?」を思い出すとき、細かな食材まで鮮明に覚えていることもあれば、ざっくりと「お肉料理だったかな?」というふうに、大まかにしか覚えていないこともありますよね。
心理学の研究では、このような違いを区別して考えます。
つまり、記憶には「細かな違いや細部まできっちり覚えるタイプの記憶(細部記憶)」と、「大体の内容やざっくりとした印象だけ覚えているタイプの記憶(全体記憶)」という2種類があるとされています。
研究チームが注目したのは、「音楽を聴いて気分が高まったり落ち着いたりすることで、この2種類の記憶にそれぞれ異なった影響が出るのでは?」という点です。