皆さんは好きな曲を聴いた瞬間、その時の気持ちや風景まで一緒に蘇ってきた経験はないでしょうか。
近年になって音楽と記憶の関係がかなり深いことがわかってきています。
ですが今回、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で行われた新しい研究によって、物事を覚えた直後に音楽を聴くと、その音楽によって引き起こされた感情の高まり方によって記憶力が変化することが明らかになりました。
興味深いことに、この研究では、感情がほどよく高まったときには細かな情報の記憶力が向上した一方、感情が強すぎたり、逆に低すぎたりすると、細部の記憶がむしろ弱まってしまうという「感情の最適レベル」が存在することが示されたのです。
音楽が記憶力を改善するということは、以前からよく知られていますが、なぜ「ちょうどいい感情の盛り上がり」がこれほど重要なのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年7月30日に『The Journal of Neuroscience』にて発表されました。
目次
- 記憶を揺さぶる音楽と感情の関係
- ほどよい音楽の興奮が細部記憶を強化する
- 感情のスイッチで記憶を使い分ける未来
記憶を揺さぶる音楽と感情の関係

私たちの身の回りには、いつも音楽が流れています。
映画の主題歌を聴けば、その映画の感動的なシーンが浮かんできますし、懐かしい曲を聴くと、まるでタイムマシンに乗ったように、昔の出来事や気持ちがよみがえることもあります。
このように、音楽と記憶はとても密接に結びついています。
でも、どうして音楽を聴くだけで昔のことが鮮明に思い出せるのでしょうか?
実はその秘密は、音楽が私たちの感情を強く揺さぶるからです。
例えば、好きな曲を聴いているとワクワクしたり、悲しい曲を聴いていると切なくなったりしますよね。
音楽がこうした感情を呼び起こすとき、脳の中では特別なホルモンが出ています。