なお、日本の公立学校で公式行事の際に行われる「君が代斉唱」は国歌斉唱という儀礼的所作であり、米国の忠誠の誓いとは性質が異なります。また、五輪やW杯などの国際スポーツ競技会の表彰式で行われる国歌斉唱も祖国の選手の健闘を愛国心で称える儀式です。このような本来の姿を国威発揚のプロパガンダとして政治利用し、ナショナリズムを扇動したのが、ナチス・ソ連・東欧・中国・北朝鮮・ロシアなどの専制国家です。

「国を愛していないの?」という言葉で、他者に罪悪感を喚起し、自説を信じるよう強制する【感情的恐喝 emotional blackmail】も祖国に訴える論証の変化形です。

誤謬の形式

主張Xは真/偽である。愛国心があればわかることだ。 主張Xを肯定/否定するのは、愛国心がないからだ。 愛国心があれば、主張Xを肯定/否定することはできない。

<例>

A:あいつは国賊だ。あいつを信じてはならない。 B:あいつは売国奴だ。あいつが言うことは全部デタラメだ。 C:あいつが売国政策を好むのは外国でハニートラップに引っかかったからだ。 D:あなたに愛国心があれば、わが党の政策を支持するはずだ。 E:子どもを生まないのは愛国心が足りないからだ。

政策策定能力が皆無の政治家が、中身のないスローガンを猛々しく叫ぶと同時に、論敵をスケープゴートにして口汚く誹謗中傷することで、情報リテラシーが低い人々を騙すという政治手法は、現在世界中で展開されています。

<事例1>愛国ハッカー

<事例1>CNN 2017/06/02

米大統領選介入、「愛国ハッカー」の仕業? プーチン氏

ロシアのプーチン大統領は1日、サンクトペテルブルク経済フォーラムの席上、「愛国的ハッカー」が昨年の米大統領選に介入した可能性があると示唆した。米大統領選に関係したサイバー攻撃がロシア発だった可能性をプーチン大統領が認めたのはこれが初めて。プーチン大統領はこれらのハッカーを、絵を描く芸術家になぞらえた。「もし愛国心があれば、(芸術家もハッカーも)ロシアを悪く言う人々と戦うため、自分に合った方法で(国に)力を貸すだろう」とプーチン大統領は述べた。一方でプーチン大統領は、ロシア政府はサイバー攻撃とは無関係との立場を変えなかった。