この理論に従うと、いくつかの笑いにかんする事実が上手く説明できます。
たとえば世界中のさまざまな人々の笑い声を調べた研究では、言語や文化が違っていても、全ての人間の笑い声は210ミリ秒ごとに繰り返される短い母音が基本となってることが示されています。
この共通性は「信号」として極めて重要です。
また人間の脳には笑いを検出して笑いを増幅する仕組みが存在しており、笑いの伝染を引き起こします。
この情報伝達を増幅させる仕組みは、笑による信号を、より効果的に周囲に拡散させることを可能にします。
そして、これまでの研究により、人類以外にも類人猿・犬・ネズミにおいても、笑い声に似た音を出すことが知られています。
この事実は、人間のように「常識からの逸脱」や「解釈の不一致」を文脈から判断できる高度な認知力を持たない動物であっても、笑いが信号として機能している可能性を示します。
鳥たちの鳴き声のなかには、ヘビやタカなどの捕食者の危険を知らせる警報の役割をする声がありますが、笑いにはその逆の、警報解除の効果があるようです。
では、私たちの「笑い」の全ては信号に過ぎないのでしょうか?
研究者は、必ずしもそうではなく、笑いには多様な生理的機能も含まれていると述べています。
体に発生する笑いのメリット

笑いの本質が警戒解除の信号であるとしても、私たちの体には笑いによってさまざまな生理反応が生じます。
笑いを制御する脳中枢は、感情・恐怖・不安を制御する中枢を重なっており、笑いによってもたらされる解放は、ストレスをやわらげ体に安堵感をもたらします。
以前に行われた研究によれば、笑いは血圧のコントロール能力と免疫力を改善し、不安や抑うつ状態を克服する効果があることが知られています。
また研究者たちは多くの論文を調査するなかで、笑いが教育において重要であることを示しています。