(※パイの代りにナイフを使う場合には、視聴者に脅威を与えるため「無害」の要素が失われ、笑えなくなってしまいます)

また上の図のように、あきらかに致命傷にもかかわらず無事であるように記述する「解釈の不一致」もまた、笑いの重要な要素になりえます。
(※マンガ風の画像ではなく、実際の頭部を撃ち抜かれた人間の写真では「無害」さが失われるため笑えなくなります)
しかし笑いを構成する材料が判明しても、笑いが発生する理由については解明が進んでいませんでした。
そこで今回シエナ大学の研究者は、過去10年間に出版されたあらゆる笑いとユーモアにかんする学術論文を分析し、人間が笑う条件やその理由を解明することにしました。
結果、笑いが発生する根本には「不調和とその解決」というテーマに沿った3つのプロセスが必要であることが判明しました。
プロセスの最初にはまず「奇妙さ」「違和感」など不調和を誘発する状況が必要とされます。
第2に不調和な状況が引き起こした心配やストレスが解決され。
第3に実際に笑い声が発生し、安全であることが周囲に知らされます。
つまり、自然に発生する笑いの多くは「警戒解除信号」としての役割があったことになります。
この理論で「他人の顔にパイをぶつけるシーン」を解釈すると、顔に物をぶつけるという本来ならば重大な「不調和(驚き・逸脱)」であるはずの事件を、安全だと周囲に知らせるために人間は笑っていた、ということになります。
より簡単に言えば人間は「顔にパイがあたる」から笑うのではなく「顔に物があたっても心配ないことを周りに知らせるため」に笑うのです。
顔にパイがベチャ~っとなる瞬間が面白いのは確かであり、そこにユーモアが存在しないというわけではありません。
しかし状況証拠を集めると、どうやら人間は笑えるから笑うのではなく、状況に危険がないことを知らせる安全信号として笑いを発していたようなのです。